内部監査制度導入のポイント

執筆者:前ノ園陽氏(株式会社タスク)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

 
(1)内部監査
 
一般的には内部監査組織は独立性を担保するため、社長の諮問機関と位置づけられ「内部監査室」と位置づけられます。
 
内部監査室は内部監査規程を作成し、その手続きに則り、業務を履行します。まずは、事業年度末に内部監査計画(体制、対象部門、監査手法、スケジュール、重点項目等を記載)を作成し、社長または取締役会の承認を得ます。期初より内部監査計画に基づき監査を実施し、内部監査調書を作成、被監査部門と指摘事項の確認を行い、調書より監査報告書を作成し社長または取締役会に報告・承認を得ます。
 
社長名により「改善指示書」を作成し部門に通知します。部門は改善指示(書)に基づき改善を行います。
 
一方、内部監査室は改善状況を確認するためにフォローアップ監査を実施し、改善状況報告書を作成し、社長または取締役会へ報告し承認を得ます。
 
(2)内部監査制度の導入時期
 
内部監査は法的な制度ではありませんが、IPOを行う際、業務の適正性を担保する上で必ず導入しなければならない制度です。上場後の内部統制や会社のコーポレート・ガバナンスを担保する上でも非常に重要な役割を担います。
 
ベストな導入時期は上場申請の直前々期後半ですが、遅くとも直前期初には導入されることが望ましいです。理由は上場後も毎年、年度計画を作成し年間を通じて監査を実施しますので、準備期間として同様の期間があると、制度として会社に定着しやすくなるからです。
 
また、東京証券取引所に申請するまでには全社、全部門、および子会社を含めて網羅的に監査を実施し、改善まで行われていることが望ましいとされています。これらの考え方より逆算すると、直前々期の下期までに社内規程集の整備を終わらせ、直前々期の期末までに内部監査計画を作成~承認を経て、直前期の期初から内部監査の業務監査(社内規程集やマニュアル等に基づき内部管理体制が整備されているかを監査)を開始することが望ましいでしょう。
 
内部監査の業務は「業務監査」と「会計監査」、「特命監査」に分類されます。「会計監査」は金融商品取引法に基づく「財務報告に係る内部統制(J-SOX)」の整備・運用業務に依拠することもできますので、その場合は「内部監査」と「J-SOX」の導入時期については平仄を合わせたスケジュールを組む必要があります。
 
なお、一連の作業は、主幹事証券会社や監査法人と相談の上、進めていくことも重要です。
 

2023/07/10 発行 IPOかわら版【第57号】掲載

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