IPO準備段階のJ-SOXへの対応は?

執筆者:前ノ園陽氏(株式会社タスク)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

 
【ポイント】
▼IPO準備会社であっても内部統制報告書を提出できる体制整備は必要
▼上場審査上も財務報告に関わる内部統制の評価・報告体制の準備状況が確認される
 
1.IPO準備会社におけるJ-SOXへの対応は必要か?
2015年5月29日に「金融商品取引法等の一部を改正する法律」の施行により、IPO準備会社の新規上場を促すことを目的として、社会・経済的影響力の大きな新規上場企業(新規上場時の資本金が100億円以上又は負債総額が1,000億円以上を想定)を除き、新規上場後3年間に限り「内部統制報告書」に対する公認会計士監査が免除されています。ここで注意して頂きたいのが監査の免除であって、内部統制報告書の提出は免除されていない、という点です。つまり、IPO後、会社としてはJ-SOX対応について何ら変わりがないため、IPO準備の段階からIPO後を見据えてその対応を行う必要があります。
 
2.IPO準備会社におけるJ-SOXへの対応
J-SOXは、上場申請期からの適用となるため、経営者は上場申請期に自社の財務報告にかかる内部統制を評価し、その結果を内部統制報告書として提出すれば問題はありません。
ただし、上場準備会社は組織風土が未醸成の会社が多く、その醸成には時間を要します。一方で、IPO準備会社では、事業内容が確立されておらず、内部牽制組織についても構築途上である場合があります。そのため、IPO準備の初期段階から業務記述書、フローチャート、RCM(リスク・コントロール・マトリクス)などを作成してしまうと、その都度見直しをしなければならない場合があることから、事業内容、組織構造がある程度固まった段階から、IPO後の内部統制報告書の提出を見据えた準備を進めていく必要があります。具体的には、会社の事業内容・規模にもよりますが、グロース上場を目指すベンチャー企業の場合、直前々期後半から直前期初くらいに着手すると、IPO準備と並行してもある程度負荷分散が図れ、手戻り感も少なく、効率的に作業を進めることができます。なお、上場審査では、財務報告に関わる内部統制の評価・報告体制の整備状況又は準備状況(対応部署、準備スケジュール、現状の課題など)について確認されます。
以上から、上場準備会社においても内部統制の充実を図ることが望まれております。
 

2022/10/11 発行 IPOかわら版【第54号】掲載

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