IPOが難しい企業と上場後失敗する企業の共通点

執筆者:前ノ園陽氏(株式会社タスク)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

 
㈱タスクでは、1995年の創業以来ご支援してきた上場準備の企業の中で、IPOができない第1位の要因は、業績の悪化や企業成長を担保できない企業でした。
 
IPOを目指す企業は、株式上場を契機に更なる成長を遂げなければなりません。投資家はその成長や社長の考え方に賛同し、期待し、投資を実行します。つまり、重要なのはIPOすることではなく、IPO後の成長を描くこと、実行すること、ステークホルダーの期待に応えることです。IPOがゴールになってしまっては何の意味もありません。
 
上場してからすぐに失敗するパターンの第1位も同様です。上場会社としての失敗ですので、経営計画の大幅な下方修正を行った結果、市場からの信頼がなくなったり、そのプレッシャーから粉飾決算を行ってしまい経営陣が退陣に追い込まれたり等、何のための株式上場であったかわからないような悲惨な結末を迎えた経営者も少なくありません。また、上場してからの失敗はあらゆるステークホルダーに迷惑をかけることとなり、きらきら輝いていたはずの経営者の経歴や信用に黒い影を落としてしまいます。やはりIPOを実現する経営者は、「鳥の眼」で上場後のビジョンを明確にし、「虫の眼」で経営を検証し、どんな状況でもステークホルダーに説明責任を果たせる覚悟のある方でなければなりません。
 
世界的なコロナ禍の中、確実に新しい時代が到来します。対面から非対面への価値観の変化などによる新しい事業やその中で台頭する企業が想定され、当然それらの企業の中からIPO市場を目指します。しかしながら、上場審査で確認される「企業の継続性及び収益性」や「内部管理体制の有効性」、「開示の適正性」などは上場会社になるために普遍的な観点です。
 
以上より、IPOを目指す経営者の第1条件は「上場後の成長を担保すること」にあります。また、内部管理体制の有効性や開示の適切性を担保するために「パートナーとなるCFOや管理部門スタッフを迎えること」です。内部統制や上場後の開示体制を社長が理解したうえで構築しなければなりません。
 
最後にパートナー(CFO)を通じて「証券会社や監査法人の指導に真摯に耳を傾け、IPOに向けた課題を一つ一つ解決すること」が最短のIPO成功への道となるのではないでしょうか。
 

2022/07/08 発行 IPOかわら版【第53号】掲載

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