執筆者:前ノ園陽氏(株式会社タスク)
※所属・肩書は掲載当時のものです。
(1)経営者の「自信と信念」がIPOを目指す重要な起点
IPOを志向する企業は、まずどの時期にIPOをできるのか、を検討します。そのバロメーターとなるのが、経営者の頭の中にある今後3ヵ年のざっくりとした事業計画です。IPO業界では、上場を予定している事業年度を「N」とし、その前期を「N―1」、前々期を「N―2」などと表現します。
いろいろなケースがありますが「N―2」を意識し始めるのは、経営者が業績に自信を持てたタイミングが多いような気がします。筆者も職業柄その時期の経営者に会うことが多く、ほとんどの経営者はバラ色の計画を「自信と信念」をもって説明します。
業績や事業計画に対する厳しい上場審査をクリアし上場後も継続できる企業のみがIPOを実現できますが、まずはこの「自信と信念」が重要な起点となるわけです。
当然ながら経営者に「自信と信念」があっても、すべての会社がIPOを実現できるわけではありませんが、仮になければIPOを本気で考える機会も訪れないはずです。そのような意味で、経営者達がこの時期に自覚する魂を込めた「自信と信念」こそが、我が国IPOマーケットの原動力となっているといえるでしょう。
(2)IPOの意思を明確にして専門家に相談することが重要
「IPOに向けたプロジェクト」を旗揚げする際の注意事項には、「中止による社内への影響(従業員へのモチベーションの低下など)」「それまでの労力が無駄になる 」などがあります。
そのため、断念することが難しいプロジェクトであるという点が挙げられます。そこで、IPOを志向する企業にとって重要となるのは、まずIPOのメリットや上場会社の責任は何かを十分に理解した上で、「いつIPOしたいのか」「成長性可能性はあるか」「課題があればクリアできそうか」などを専門家(監査法人、証券会社、IPOコンサルティング会社など)に率直に相談することです。その後、監査法人や証券会社のショートレビューを受けIPOに向けた課題などが抽出され、準備が本格的にスタートします。
(3)「スケジュール」や「To Do」を理解することが重要
IPOへの意向が固まったら、次に重要となるのが、一般的なIPOスケジュールやTo Doを理解することです。N―3期、N―2期、N―1期、N期などのスケジュールごとの課題を管理することはIPOを実現する上で非常に重要な要素(IPOの生命線)となるので、把握することが肝要となります。
2023/04/07 発行 IPOかわら版【第56号】掲載