上場準備での前捌きとは

執筆者:笹本憲一氏(公認会計士笹本憲一事務所代表)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

中小企業が上場を目指す場合、上場準備を始める前に実施すべき事項がありこれを「前捌き」と呼ぶことがあります。これは将来上場企業になったときに、上場企業としてはふさわしくないと思われる事項、言い換えれば上場の審査で✕を付けられる状況を事前にクリアするものです。典型的な例として
・株主構成…株主が大勢いてその所在が分からない株主がいる場合。また、株主の中に反市場勢力や反社会的勢力がいるような場合です。
・役員構成…会社の経営に携わっていない同族の役員がいる場合。また監査役に社長や役員の2親等内親族がいる場合(配偶者も含む)。なお経営に携わってはいても、同族の役員が過半数もいる場合は問題になることがあります。また、役員ではなくとも経営に携わっていない親族を会社の従業員として給与を支払っている場合等も解消が求められます。
・会社と役員やその親族との取引がある場合…役員とその2親等内親族や10%以上株式を持っている株主等、内閣府令財務諸表等規則で関連当事者と呼ばれている者と会社との間で取引がある場合を言います。よくある例としては、社長、その奥さんや両親との取引で、例えば会社の本社の土地が社長のお母さんの名義で会社から地代を支払っているようなケース。また、会社の商標権等を社長の奥さんが保有していることになっていて奥さんに使用料を支払っているようなケース等色々あります。これは株主に本来帰属するべき会社の利益が社長の親族等に不当に流出していないかということです。
・社長等の公私混同…社用車をもっぱら社長の息子が私用に使っているような場合や、社長の自宅を社宅にしているケース、社長の別荘を社員保養所として会社から賃料を取っているが従業員はだれも使っていないというような、公私混同のケースです。法律上問題はないが上場企業としてのマナーに欠ける行為は上場の審査では解消を求められます。
・関係会社の整理…未上場の会社では子会社を作って節税に利用したり、子会社に親族を配して給与を支払ったりしている場合があり、子会社等の存在の合理性が認められないときは清算を求められることもあります。
このように中小企業の上場準備では、まず会社と同族間の取引や公私混同的な状態を解消することが必要な場合が散見されます。直接親族の利益に係わることが多いので、監査法人の短期調査の結果を踏まえ、上場準備を始める前に十分な協議が必要です。

2018/1/12 発行 IPOかわら版【第36号】掲載

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