リスクマネジメントについて

執筆者:廣瀬嘉彦氏(GRCコンサルティング代表)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

リスクマネジメントについて、内部統制の要素である「リスクの評価」と「リスクの対応」とする意見が多いですが、私は「統制活動」も含めたものと考えています。なぜなら、リスクの評価と対応が適正であったとしても、正しく実行されなければリスクの顕在化は避けられないからです。
まず、リスクマネジメントを正しく実行するために重要な「チームプレー」について考えてみましょう。例えば、野球・サッカーではチームプレーができなければ、個々のプレイヤーの技術・センスがいくら良くても、負けることがあります。リスクマネジメントも同じで、一人の個人のセンスが磨かれ、達人の域に達していたとしても、他のメンバーの協力がなければ何もできません。「予期しない事が発生した時に、どれだけ対応できるか」「日頃からどれだけ周りが見えているか、連携できているか」がキーになります。
また、子供たちの運動会で行なわれる組み立て体操の「人間ピラミッド」を思い出してください。どの段であろうと1人がバランスを崩すと「ピラミッド全体を崩壊させる」リスクがあります。リスクマネジメントを社内の「専門家」の仕事と考えるのではなく、自分自身も組織というピラミッドの、リスクマネジメントを担うチームの一員であることを忘れないでください。
次にチームプレーに欠かせないのが、「情報(I)」と「コミュニケーシヨン(C)」の重要性です。野球でもサッカーでも目で見た情報を分析し、伝達する監督・コーチが必要です。情報を収集し、分析し、的確な指示を出すことも重要ではありますが、指示した〝意図通りに〟相手に伝わらないと大きなミスが発生します。「コミュニケーション(C)」の意味は「こちらの意図通りに受け手が理解した」ことを確認できたということです。
今後、「情報(I)」と「コミュニケーシヨン(C)」はさらに重要性を増していきます。なぜなら、「I」と「C」の伝達手段が加速度的に変化しているからです。情報の拡散するスピードも範囲も10年前とは比較になりません。この数年フェイクニュースやYouTube・SNSによる情報拡散などによる被害も大きな問題となっています。「I」と「C」の前提となる「確実な情報」の伝達が非常に難しくなっているだけでなく、「偽情報」への迅速な対応も要求されています。リスクマネジメントもこれらの変化に対応できる考え方・態勢に変えていかなければなりません。

2019/4/12 発行 IPOかわら版【第40号】掲載

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