~新型コロナウイルスがIPO市場に与えるインパクトと上場準備会社が今すべきこと~

執筆者:隅屋彰則氏(株式会社船井総合研究所 金融・M&A支援部)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

新型コロナウイルスの影響により、世界的に株式市場が大きな影響を受けており、IPO市場も異常事態となっております。ここ数年は、新規上場会社数が90社前後で推移していましたが、2020年は50~60社となる可能性があり、状況次第では50社を下回る可能性もあります。そこで、新型コロナウイルスの影響によりIPO市場がどのように影響を受けているか、上場準備会社はどう対処すべきかについてまとめさせていただきます。
 
IPO市場に関して、2020年は東京オリンピックが予定されていたことから、オリンピック期間までに上場予定している企業が多く、2020年に入って証券取引所による上場承認数は順調に伸びておりました。ただ、新型コロナウイルスの影響から株式市場も低迷し、新規上場企業の公募割れが続いたことから、3月のウイングアーク1stの上場承認取消に始まり、4月7日時点で14社が上場承認を取り消す、という異常事態になっております(例年、上場承認取消はあるとしても1、2社程度です)。14社いずれも上場承認取消の理由は、新型コロナウイルスの影響ではありますが、すべての企業が上場承認の取り消しとしているわけではありません。では、上場承認を取り消した企業と予定通り上場した企業は何が違うのでしょう。その違いを次に説明させていただきます。
 
まず、上場承認を取り消した企業は、大株主が創業オーナ企業ではなく、ファンドや親会社であることが多いです。大株主としてIPO後の投資回収(EXIT)を予定していた場合、新規上場企業の公募割れが続いている状況において、そのまま上場したとしても、想定していた投資回収が難しくなるからです。
 
では、今上場準備を進めている会社はどう対処すべきでしょう。新型コロナウイルスの影響が今度どのくらい続くかはわかりませんが、少なくとも1年は上場準備のスケジュールに影響があると考えられます。なぜならば、市況が回復してきたら、上場承認を取り消した企業が、再び上場の為の審査を受ける可能性が高い上、上場承認手前で若しくは上場審査のタイミングで、スケジュールを見直した多くの上場準備会社が(特に、オリンピック期間前の上場を予定していた企業は3月から5月頃に審査を受ける予定だったはずなので、それらの会社もまとめて)上場審査に向かうため、上場審査自体が非常に込み合うことが想定されます。証券取引所の審査部門のリソースも限られているため、玉突きでスケジュールが後ろ倒しになる可能性があります。
 
そのため、上場準備会社は、準備状況のスケジュールにもよりますが、主幹事証券と上場の為のスケジュールについての見直しも含めて、時間をかけてでも今の段階からきちんと話し合っておく必要があります。2022年の市場再編も控えており、さらなる対応が必要になる可能性も高いので、主幹事証券と契約中であっても、他の証券会社とも密にコミュニケーションを取っておくことをお勧めします。
 

2020/01/10 発行 IPOかわら版【第44号】掲載

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