ベンチャー企業の上場の危うさ

執筆者:笹本憲一氏(公認会計士笹本憲一事務所代表)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

平成11年に各地の証券取引所で新興市場が開設されて以後、ベンチャー企業の上場が相次いで上場と言えばベンチャーのような時代になって来ました。しかしながら上場はしたもののそのあとの成長が萎んでしまい、中には経営が破綻したり上場維持のために粉飾決算に手を染めたりする最悪のケースも散見されます。スピード経営とか技術革新に乗り遅れないためとか色々理由が挙げられていますが、余りにも上場を急ぎ過ぎたためではないかと思っています。このような拙速上場の弊害として次のようなことが考えられます。
・ビジネスモデルが一発勝負的なところがあり、技術革新や消費者のニーズの変化に対応できないケース。要するにビジネスモデルの陳腐化が予想以上に早かったということ。
・「会社」としての経験が短いため会社のディフェンスを担う管理部門や監視部門が未熟なケース。特に開発や営業というオフェンス面にばかり目が行き、上場会社としての株主に対する責任を社長が十分認識していないこと。
・ビジネスモデルの陳腐化や成長の限界に気づきM&A等で業容拡大を図るものの、小規模会社の経営しか経験がないため、経営能力の不足によって十分な成果を出せずかえって社内的に混乱をきたして自滅するケース。   
・上場で得た莫大な資金を新たなビジネスへ投資することができず、キャッシュリッチなまま業績が低迷して反市場勢力等に付け込まれるケース。いわゆる箱会社化。
このように様々なケースが見られますが、とりわけITやバイオといった分野のベンチャーに多いケースとして、社長自らが開発者・研究者であることが多いため、研究開発に注力するあまり経営そのものや営業がおろそかになり、それが上場後に失敗する原因になっているのではないかと考えています。言うまでも無く株式会社の目的は顧客や消費者から収入を得てこれで従業員を雇用し、株主に配当することです。
その指揮を執るのが社長の役割であって、何よりも利益を出すことが第一の使命で研究開発等は二の次でしょう。会社は研究所や同好会ではなく「商売」をする場であり、ベンチャーの最大公約数的な弱点である営業に最も注力すべきだと思います。筆者のこれまでの経験から営業力のある会社は簡単にはつぶれない、逆にどんな優秀な技術を持っていてもそれをキャッシュに変えられない会社はいずれ消えて無くなると言えます。
提言として、ベンチャーの社長がIPOを目指すなら、何よりも営業に専念すること、それに信頼できるCFOを横に置くことです。

2017/10/13 発行 IPOかわら版【第34号】掲載

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