SOS! 失敗しない中国・アジア進出

執筆者:蕪木優典氏(株式会社I-GLOCAL代表取締役社長)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

【はじめに】
日系企業の中国・アジア進出の歴史は20年以上もあり、既に現地で成功を収めている企業もあれば、失敗して撤退している事例もある。雑誌や各種メディアなどでは現地での成功事例が華々しく取り上げられることがある。しかし、現実には、記事にできない多くの失敗事例がある。
【失敗とその背景】
失敗を定義することは難しいが、正しく経営をしていなかったことが為に、経済的な損害を被り、あるいは社会的な信用が低下することを意味すると考える。概ね、経営者や従業員の不正やコンプライアンス違反がある。
基本的には現地にいる人間に属人的に任せっきりにしていることが多く、まともな監視をせず、報告も分析していないことに起因することが多い。日本では、バックヤード業務がしっかりしていることもあり、あまり意識はしないが、現地では、日本と同様の水準で、日本では当たり前とされていることが実践できないということを理解する必要がある。現地には現地特有の商習慣もあり、日本では考えられないことが起きるということを常に考えておく必要がある。
「日本人が日本人同士、日本で仕事をしている感覚」から脱却し、「現地で、現地の人と仕事をしている」という現実を感じる必要があるということである。
【失敗を繰り返さない正しい経営とは】
中国・アジアにおいて、確かにそれぞれの国特有の失敗事例というのもあるが、概ねどの国にも共通の失敗事例が多くある。その失敗は先の述べたとおり、日本的な感覚を持ち込んで、現地で仕事を実践してしまうことがその背景ではあるが、失敗事例を研究せずに、自分の会社は大丈夫だと勝手に安心してしまっていることに大きな原因がある。失敗事例を研究し、組織的に問題を隠さない社風にしなければ、同じ失敗を繰り返し、最終的には致命的な失敗をもたらす。
現地法人で失敗を繰り返さずに成功するビジネスはどうやればよいのか?  私見ではあるが、シンプル(Simple)、オープン(Open)、スピーディー(Speedy) のSOSであると考える。物事を必要以上に複雑にせず誰にでもわかるようなシンプルなやり方を採用し、隠さずにそれらを共有化する。そして、目標に向かってスピーディーに展開する。失敗を繰り返す会社は、必要以上に複雑な仕事のやり方をし、一部の人間だけがそれを知っている。そして意思決定が遅いと思われる。正しい経営はSOS!

2012/07/12 発行 IPOかわら版【第13号】掲載

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