ITシステムコンサルタント目線でのIFRS

執筆者:谷垣 康弘氏(青山システムコンサルティング・エグゼクティブディレクター)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

ヘラクレス市場と統合した新たなジャスダック市場がスタートし、上場増加が期待されていますが、IPOバブルの頃とは時代背景も変わり上場を果たせばIFRSに準拠せねばならない新たな重荷の時代です。「ITシステムコンサルタント」の視点から中堅中小規模上場企業における「IFRS会計システム」の勘所を3点ほどご紹介しましょう。キーワードはまさに「身の丈」。
①複数元帳への対応 日本の会計基準(日本基準)とIFRSでは売上計上基準や固定資産償却期間が異なるため、日本基準元帳とIFRS基準元帳が必要になると言われます。複数元帳対応をPRしている会計パッケージも多いですが、会計システムの複数元帳対応は売上や仕入などを自動仕訳で連携している業務アプリケーションも、日本基準・IFRS基準の二重仕訳データを発生させねばならなくなるなどシステムの複雑さを招くリスクを秘めます。既にIFRS対応を終えている欧州では基幹システムで複数元帳対応している企業は少ないようです。実務ベースでは自国会計基準で決算し、マニュアルで組替えIFRS対応している企業が多いのも事実です。「身の丈」に合った冷静な視点が重要です。
②複数固定資産台帳への対応 稼働実績等から耐用年数を導き出す償却方法が義務づけられているため、従来の減価償却とは別の償却管理ができるIFRS対応固定資産台帳が必要となります。資産を取得した場合には借入に関わる利息や保証料も計上しなければなりません。減損会計処理も厳格なため、一旦減額した評価損も、資産価値が上昇した場合は戻入処理が求められます。システム的には複数固定資産台帳対応、資金調達情報、過年度減額・加算の変更履歴などのデータを確実に保持する機能が求められます。基幹系システムの機能追加か、表計算的対処か、「身の丈」の判断に悩むところです。
③過年度遡及修正 会計方針の自発的変更や過年度誤謬があった場合遡って修正を求められます。確定した連結調整仕訳とは別に遡及処理が区別できるよう連結調整仕訳を管理し、遡及前と遡及後で財務諸表がそれぞれアウトプットできる機能が求められます。IFRS対応の為に会計システムを入れ替える場合には最低過去3期分の残高データの移行は事前に心積りが重要です。まさに経営視点とITシステムの両面から「身の丈」に合った判断が随所で求められるゆえ、「箱売り」的ベンダーでは不安を感じざるを得ないのがIFRS対応なのです。

2010/10/18 発行 IPOかわら版【第6号】掲載

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