収益認識会計基準の適用に伴う税務への影響

執筆者:松山浩也氏(朝日税理士法人 マネージャー・公認会計士)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

ご存知の方も多いと思いますが、令和3年4月1日以降開始事業年度より「収益認識会計基準」が強制適用されます。適用の対象となる法人は、上場会社、会社法監査対象会社で、上場会社の連結子会社についても会計方針統一の点から適用対象になると考えてよいでしょう。
今回は、「収益認識会計基準」と法人税、消費税の関係を中心にご説明します。
 
1.「収益認識会計基準」の概要
この「収益認識会計基準」は次の5つのステップにより収益認識をすることになります。
第1ステップ(契約の識別)
第2ステップ(履行義務の識別)
第3ステップ(取引価格の算定)
第4ステップ(履行義務への取引価格の配分)
第5ステップ(履行義務の充足による収益の認識)
本基準は、
① 第2ステップで識別される履行義務の単位で、収益を認識すること
② 第3ステップの取引価格の算定において、変動対価とよばれる見積りの要素を反映させることが特徴的です。
 
2.「収益認識会計基準」と法人税
「収益認識会計基準」の公表を受け、法人税については平成30年税制改正により、基本的に「収益認識会計基準」に対応する改正がなされました。ただし、一部例外があり留意が必要です。
例外的な取扱いになるのは、返品と貸倒引当金(回収可能性の反映)です。平成30年税制改正により新設された法人税法22条の2第5項で、返品と貸倒れについて、「返品や貸倒れの可能性がある場合においても、この影響を収益価額に織り込むことはできない」旨が規定され、会計処理と法人税の扱いに乖離が生じます。これらについては、別表調整による法人税の申告が必要となります。また、収益認識について、一部税務上独自の要件を求められるケース(ポイント制度等)もあります。
 
3.「収益認識会計基準」と消費税
消費税については、「収益認識会計基準」に準拠する改正はなされておらず、従前と同様の取扱いとなります。
そのため、会計上の収益計上金額と消費税法の資産譲渡等の対価の額に乖離が生じることが想定され、消費税は変動対価を加味しない契約金額等に基づき会計ソフトへ入力するなど留意が必要です。
 
さて、現在上場準備をしている会社についても、晴れて上場を実現し、令和3年4月1日以降開始事業年度を迎えられる際にはこの「収益認識会計基準」を適用しなければなりません。そのため、上場準備の段階から「収益認識会計基準」を念頭においた会計処理の検討、業務フローの整備等を進める必要があります。

2019/7/12 発行 IPOかわら版【第41号】掲載

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