第9話 親会社と上場審査

えー、安藤エイタです。今日は、親会社がある場合の留意点についてお話しします。

安藤エイタ
社長。最近、売上が伸び悩んでいるようなのですが、心当たりはありますか?
諸福あゆみ
どうやら、おとなしかったライバル企業が周りの会社を系列化して、攻勢をかけ始めたらしいのよ
安藤エイタ
そうだったんですね
諸福あゆみ
ウチも黙って指をくわえて見てるわけにはいかないわ
安藤エイタ
ダメですよ、社長。安易な買収は、先代の考えに合わないって、以前お話ししたじゃないですか。それに、IPOを考えると、ムダに関係会社が増えたっていいことないですよ
諸福あゆみ
関係会社? グループ会社のことかしら? 系列会社とか関連会社っていう呼び方もあって、何がどう違うのかわかんないのよ
安藤エイタ
確かに、色んな呼び方があるのですが、IPOにおいては会計基準上の定義が重要なんですよ
諸福あゆみ
やっぱり、ちゃんとルールがあるのね
安藤エイタ
まずは、議決権の50%超を持つなどして、ある会社を支配している場合には、支配されている方の会社を「子会社」と言って、支配している方の会社を「親会社」と言います
諸福あゆみ
多数決だもんね
安藤エイタ
次に、議決権の過半数は持っていないにしても、20%以上持つなどして、ある会社に重要な影響を与えることができる場合には、影響を受けている方の会社のことを「関連会社」と言います
諸福あゆみ
関連会社って、会計的にはそういう意味なんだ
安藤エイタ
そして、関連会社から見て、自社に重要な影響を与えている会社のことを「その他の関係会社」と言います
諸福あゆみ
なんなのよ、それ。ちゃんと名前付けてあげなさいよ
安藤エイタ
これが正式名称なんですよ
諸福あゆみ
子会社に親会社に関連会社にその他の関係会社ね
安藤エイタ
それらをひっくるめて「関係会社」と言うんですよ
諸福あゆみ
親戚みたいなものね
安藤エイタ
まさに、その通りです。だから、上場審査では、親戚同士、その関係を利用して、おかしな取引をやっていないかとか、親戚に悪い奴はいないかとか、しっかりチェックされます
諸福あゆみ
親会社がいるのに、子会社の方が上場することもあるんだ?
安藤エイタ
ありますよ。オーナー企業の場合、オーナーの個人的な資産管理会社が親会社にあたるというケースはよくあるんです
諸福あゆみ
どういうこと?
安藤エイタ
相続税対策なんかで、オーナーが資産管理会社を作って、その会社に上場しようとする会社の株式を持たせることは一般的なんですよ
諸福あゆみ
なんか、おかしな感じね
安藤エイタ
どうしてですか?
諸福あゆみ
だって、上場会社にせっせと投資しても、その資産管理会社とやらに全部吸い上げられたりしちゃ、意味ないじゃない
安藤エイタ
なので、上場会社に親会社がいる場合には、その親会社の決算内容などを開示しなければならないんですよ
諸福あゆみ
個人的な資産管理会社の決算内容が世間に公表されちゃうわけ?
安藤エイタ
まあ、そうなりますね
諸福あゆみ
じゃあ、議決権比率を50%以下に下げれば公表しなくても済むのね
安藤エイタ
JASDAQの場合はそうなんですが、東証の本則市場やマザーズの場合は、その他の関係会社も開示の対象となるんですよ
諸福あゆみ
ということは、開示しないようにするには、議決権比率を20%未満にしなくちゃいけないということね
安藤エイタ
そこまで下げると、オーナーの影響力も小さくなりますからね
諸福あゆみ
ま、ウチの場合は、株式のほとんどをパパ個人が直接持ってるから、関係ないんだけどね
安藤エイタ
議決権とは関係なく、本当の親子ですしね
諸福あゆみ
早く上場して、パパの支配から抜け出してやるんだから

(つづく)

第10話 子会社と上場審査

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