第8話 ルールとマナー

えー、安藤エイタです。今日は、法令違反じゃないのにやってはいけないことについてお話しします。

ブォォォオーン、キキィーッ!

諸福あゆみ
安藤君!
安藤エイタ
しゃ、社長!? こんな高そうな車、いったいどうしたんですか?
諸福あゆみ
ふふっ。ついに買っちゃったのよ
安藤エイタ
確かコレ、限定生産のモデルですよね
諸福あゆみ
そうなのよ。ここんとこ、上場準備で何かと物入りだったけど、やっぱり我慢できなかったわ
安藤エイタ
え!? まさか、会社のお金で買ったんじゃないでしょうね
諸福あゆみ
もちろん会社のお金よ
安藤エイタ
買いたい資産があるとかおっしゃってたのは、この車のことだったんですか?
諸福あゆみ
そうよ
安藤エイタ
どうしてこんな車買っちゃうんですか!
諸福あゆみ
前に言わなかったっけ? 私はスピード重視なの。この車、すごく速いんだから
安藤エイタ
そうじゃなくて、どうして社長の趣味の車を会社のお金で買うんですかって意味ですよ
諸福あゆみ
会社のお金と言ったって、社長は私だし、オーナーはパパなんだから、好きに使ってもいいでしょ
安藤エイタ
では、IPOはあきらめるんですね
諸福あゆみ
どうしてよ。ソレはソレ、コレはコレでしょ
安藤エイタ
それはこっちのセリフですよ
諸福あゆみ
どういうことよ
安藤エイタ
会社は会社、個人は個人。上場するなら、そこはしっかり区別していただかないと
諸福あゆみ
もう、安藤君ったら、厳しいんだから。税理士の先生にもちゃんと確認は取ったのよ
安藤エイタ
そういう問題じゃないんですよ。例えば、立派なドライバーというのは、単に交通ルールを守って運転しているだけじゃなくて、道を譲り合うだとか、早めにライトを点けるだとか、マナーもしっかり守れる人のことですよね
諸福あゆみ
それはそうだけど
安藤エイタ
IPOも同じですよ。会社法や税法といったルールだけじゃなくて、上場会社としてのマナーも守らないといけないんですよ
諸福あゆみ
法律的にはOKでも、上場審査では許されないことがあるってわけね
安藤エイタ
その最たるものが経営者の公私混同ですよ
諸福あゆみ
じゃあ、もしかして、当社の横浜工場の建ってる土地はパパ名義なんだけど、これも公私混同?
安藤エイタ
近くに新工場を建てて稼働率も下がってるので撤退した方がいいのに、ずっと賃料を払い続けてる工場ですよね。公私混同と見られても仕方ありませんよ
諸福あゆみ
じゃあ、パパが今回世界一周旅行に行くのに、会社で旅行代金を立替えてるんだけど、これもダメなのね?
安藤エイタ
ダメですよ。会社で立替える必然性がないですよ
諸福あゆみ
まさか、当社のあんパンやアイスクリームを私が普通にお店で買うのもダメってわけじゃないわよね?
安藤エイタ
それは、大丈夫ですよ。要するに、役員や役員の身内が会社と取引をするには、会社として取引をする意味がちゃんとあって、しかも、その取引条件が客観的に見ておかしくないことが必要なんですよ
諸福あゆみ
やだ。じゃあ、もう買っちゃったこの車はどうすればいいのよ
安藤エイタ
社長が個人で買取れば問題ないですよ
諸福あゆみ
そんなお金あるわけないでしょ
安藤エイタ
じゃあ、売却するしかないですね
諸福あゆみ
ずっと欲しかった車なのになあ
安藤エイタ
まあ、上場してお金持ちになったら、買い戻せばいいじゃないですか
諸福あゆみ
わかったわ。売ります。でもその前にもうひとっ走り行ってから。安藤君も付き合いなさいよ
安藤エイタ
私は、平方コンに戻って、少し野暮用が……
諸福あゆみ
マナーが大事なのよね。レディの誘いを断るなんてそれこそマナー違反じゃないのかしら?
安藤エイタ
社長命令とあらば、お付き合いしますか……

(つづく)

第9話 親会社と上場審査

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