みなさん、こんにちは。
何故か最近英語の勉強をしている寺田です。
我が監査法人で、ちょっと前から、一部スタッフの間で英語ブームが来ているようです。その影響もあって、負けじと(!?)僕も英語の勉強をしていたりします。といっても、大したことはやっていないのですが・・・
とは言え、将来の日本におけるIFRS導入を見据えると、会計士にとっての英語力の重要性は益々高まっていくのではないかと思っている次第でございます。。。
今回のテーマは、前回の予告どおり「借入費用」を取り上げたいと思います。
「借入費用」に関しては、IAS第23号の「借入費用 (Borrowing Costs)」において、具体的に規定されています。ここでいう「借入費用」とは、端的に言うと、借入金に係る支払利息のことになります。
まず最初に、IAS第23号の要旨をご説明すると、借入費用の会計処理としては、
・一定の要件を満たした「借入費用」は資産計上しなければならない。
・それ以外の(一定の要件を満たさない)借入費用については、当期費用として計上する。
ということになります。
『一定の要件を満たした「借入費用」は資産計上しなければならない。』の箇所が、IAS第23号の最大の(唯一の!?)ポイントです。
現在の日本基準においても、一定の要件を満たせば借入費用を資産計上することも認められています。但し、そのような日本基準に比較して、IAS第23号の規定は、
・強制的に資産計上が求められていること (日本基準は、容認規定)
・資産計上される借入費用の範囲が広いこと (詳しくは、後ほどご説明します)
の2点で、内容が大きく異なります。
日本の会計実務においては、借入金の支払利息は当たり前のように当期費用(営業外費用)として計上されています。しかし、IFRSが適用されると、当期費用として計上されるのではなく、資産計上される借入金利息が出てくる可能性があります。
それでは、どのような場合に借入費用を資産計上しなければならないのでしょうか?
これに対応するIAS第23号の記載として、「企業は、適格資産の取得、建設又は生産に直接起因する借入費用を、当該資産の取得原価の一部として資産化しなければならない。」旨の規定があります。
ここで、大事になってくるのは、「適格資産」の定義です。IAS第23号では、適格資産を「意図した使用又は販売が可能となるまでに相当の期間を要する資産」としています。つまり、企業が「適格資産」を取得する場合に、対応する借入費用をその「適格資産」の取得原価に算入することになります。言い換えれば、企業が「適格資産」を取得していない場合には、IAS第23号は全く関係ないということも出来ます。
「適格資産」については、①「相当の期間」の考え方、及び②対象となる資産の範囲、の2点がポイントです。
① 「相当の期間」の考え方
「相当の期間」に関しては、IFRSにおいて詳細なルールやガイダンスは定められていません(正に、「原則主義」です)。従って、この「相当の期間」の考え方については、会社によって判断する必要があります。例えば、1年基準(1年を超えるものを「相当の期間を要する」とみなす)などは、日本のこれまでの会計実務を踏まえると、最も馴染みやすい考え方であると言えると思います。
欧州の先行開示事例を見てみると、会計方針の注記として「相当の期間」という無難な表現を使用しているケースが多いのですが、会社によっては「6か月基準」、「1年基準」、「1年6カ月基準」を明記している事例もあります。いずれにしても、「相当の期間」の考え方については、特に正解というものはなく、会社の実態に応じて会社自身が判断することになります。
② 対象となる資産の範囲
建物・工場のような、いわゆる有形固定資産だけではなく、無形固定資産や棚卸資産も「適格資産」となり得ます。但し、棚卸資産については、繰り返し大量に製造されるものは、適格資産の範囲からは外れます。
すなわち、一般的には「建設仮勘定」、「ソフトウェア仮勘定」、「未成工事支出金」、「仕掛品」などのうち、完成までに相当期間を要するものに対して、対応する借入費用を資産計上することになります。
それでは、そのような適格資産について、どのように資産計上すべき(取得原価に算入すべき)借入費用を算定するのでしょうか?
IAS第23号では、対応する借入金を
(1) 適格資産に直接起因する借入費用
(2) 一般目的で資金を借り入れた場合の借入費用
の2つに分けて算定方法を規定しています。
(1) 適格資産に直接起因する借入費用
これは、いわゆる「ヒモつき」の借入金のことです。適格資産の取得資金を調達するための借入金が明確に区分・判明しているのであれば、当該借入金に係る利息を、適格資産の取得原価に算入することになります。
(2) 一般目的で資金を借り入れた場合の借入費用
上記(1)のようなケースは実はそんなに多くないと思います。むしろ、ある程度の借入金は存在し、直接的(ヒモつき)ではないが間接的にその借入金によって調達した資金を用いて、「適格資産」を取得しているケースが専らだと思います。
その場合には、「資産化率」の概念を用いて、資産計上すべき借入費用を算出することになります。「資産化率」とは、簡単にいうと、借入金の加重平均レートのことです。つまり、「適格資産」の取得に関する支出額に、借入金の加重平均レートを乗ずることにより、資産化すべき(取得原価に算入すべき)借入費用を便宜的に算定する方法が使用されます。
IAS第23号に関する骨子は以上のとおりになります。
実は、そんなに難しい規定ではありません。単純に、完成に時間がかかる資産については、その期間に関する借入金利息も資産計上する、だけの規定です。
(もちろん、今回はご紹介しなかった、もうちょっと細かい規定は多々ありますが・・)
個人的には、適格資産の要件である「相当の期間」の考え方さえ整理すれば、実務上はさほど大きな論点はないと言う事ができると思っています。但し、実際の計算作業等は煩雑になってしまう場合もあり得ますので、ご留意下さい。
また、これまでの日本における会計実務の観点からは、最初は今イチ馴染めない方も多いのではないのでしょうか??そのような方も、「B/S重視」の観点から割り切って(!?)理解して頂く必要があるかと思います。
最後に、余談となりますが、IAS第23号は2007年に改訂されています。
それまでは、
・借入費用を全て当期費用計上
・適格資産に係る借入費用を資産計上し、それ以外は当期費用計上
は選択適用できたのですが、2007年の改訂によって「借入費用を全て当期費用計上」することが出来なくなりました(2009年1月1日以降開始する事業年度より適用)。
つまり、適格資産に係る借入費用を資産計上することが強制適用されたのは、割と最近になってからの事です。ですので、欧州の先行事例に関しては、まだまだこれからの状況に注目していく必要があるものと考えています。
という訳で、今回はこの辺で。。。