第10回 金融商品の認識と測定について

みなさん、こんにちは。
最近、IFRSの勉強・情報収集にちょっと疲れてきた寺田です。
自分で言うのも何ですが、結構IFRSについて見識が深まると、今の日本基準に基づく仕事をしていても、「IFRSだったらこうなんだろうなあ・・」とつい考えてしまう今日この頃です。。
今回は、金融商品の認識と測定について触れたいと思います。
というのは、10月14日に大手町の経団連会館で開催された、IASB議長D.トゥイーディーのシンポジウムに参加したのですが、そのテーマがこれでしたので。
日本基準では、「金融商品に関する会計基準」や「金融商品会計に関する実務指針」等にその規定が定められており、国際会計基準ではIAS39号(Financial Instruments: Recognition and Measurement)がこれに相当します。
このコラムの最後に、現状のIAS39号と日本基準との大まかな違いについて記載しますが、そもそもIFRSにおいて、その内容の全面改訂が近日中に予定されています。
IAS39号は、IFRSのなかでも、相当なボリュームかつ非常に複雑な規定となっています。また、原則主義の特徴をもつIFRSの体系の中では、適用指針、Q&Aを含め、非常に細やかな規定が定められており異彩を放っているとも言われているようです。この前のシンポジウムにおいても、IASB議長自らが「IAS39号を理解しているという者は、IAS39号を読んでいない者であるはずだ」と言ってました。その発言もどうかと思いますが・・・
いずれにしても、その非常に複雑な規定内容により、実務上の煩雑さや運用面での不備の問題があるということで、近日中に予定されている規定の全面改訂では、よりシンプルな規定化を相当意識しているようです。
最近、日本の新聞・雑誌等の記事で、持ち合い株式の売却益や受取配当金が純利益に計上できなくなる旨の内容が記載されていると思いますが、それはこの全面改訂の内容を受けてのものです。正確には、包括利益計算書でいうところの「その他包括利益」に持ち合い株式の売却益や受取配当金が計上されることになりそうだということです。
(なお、「包括利益計算書」については、次回のコラムで改めて取り上げたいと思います。)
少なくとも、現時点でのIASBの改訂作業の方向性は上記のようですが、日本の実情(持ち合い株式の会計処理)については、それなりの考慮をした上で、最終決定をする予定です。
改訂内容については、確定して関連文書が公表され次第、また当コラムにて取り上げたいと思います。
ということで、金融商品の認識と測定に関する、現時点での日本基準と国際会計基準の差異概要は以下のとおりです。IFRSは近日中に全面改訂されますが、差異概要については現時点のものと近似していると思われるので、簡単に記載しておきます。
(1)金融資産の区分
IFRS:「満期保有投資」、「貸付金及び債権」、「損益計算書を通じて公正価値で測定」、「売却可能金融資産」の4つの区分
日本基準:現預金、受取手形、金銭債権、有価証券及びデリバティブ取引により生じる正味の債権等と定義づけた上で、有価証券を「売買目的有価証券」、「満期保有目的の債券」、「関連会社株式」、「その他有価証券」に区分。
(2)金融資産の測定
・償却原価法について、日本基準では金利の調整部分について(IFRSは特に限定なし)、利息法だけでなく定額法も容認(IFRSは利息法のみ)
・日本では、その他有価証券の評価差額について、部分時価直入法を認めている(IFRSは全面時価直入法のみ)
・日本基準では時価のない有価証券について取得原価で計上することを容認しているが、IFRSは非上場であっても原則として公正価値で測定を行うこととしている。(なお、IAS39号では子会社・関連会社株式は適用対象外)
(3)金融負債の測定
・IFRSでは、トレーディング目的以外の金融負債については、実効金利法に基づく償却原価法
・日本基準では、原則額面だが、社債は償却原価法
(4)金融資産の減損
・IFRSでは、より厳密な発生損失モデルに基づき、帳簿価格と見積将来CFの現在価値の比較により、減損損失を認識する
・日本基準では、債権については「一般債権」、「貸倒懸念債権」、「破産更生債権等」に区分して、貸倒引当金を算定する。
・IFRSでは、満期保有目的投資に関する減損損失について、事後的に公正価値が回復した場合は戻入れをしなければならない。
(5)ヘッジ会計
・IFRSでは、公正価値ヘッジについては常に時価ヘッジとして処理されるが、日本基準では原則として繰延ヘッジ
・IFRSでは、合成キャッシュフローに基づく会計処理は認められないが、日本基準では金利スワップに係る特例処理や為替予約の振当処理が、例外的に認められている。
個人的には、日本で広く適用されている金利スワップに係る特例処理と為替予約等の振当処理が認められなくなるのが、結構実務上のインパクトが大きいのかな、思っています。
あとは、有価証券の評価について、評価方法そのものよりも、次回でとりあげる包括利益計算書との兼ね合いのところでしょうか・・・(それは、また次回)
ということで、次回の「包括利益計算書」でまたお会いしましょう。。

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