第23回 リース会計

みなさん、こんにちは。
もう今年も、残りあとわずかとなりました。
IFRSに関していえば、収益認識の公開草案が公表されたりとか、今年も色々と動きがあった年でした。残念ながら(!?)、来年も同様に色々と動きがあることが予想されます。
来年も、引き続き気を引き締めて、IFRSに関する情報収集と情報提供をおこなっていきたい、と思っている次第です。
このコラムの今年最後のテーマは、「リース会計」を取り上げたいと思います。
こんな時期なので、今回はなるべくコンパクトにまとめたいと思います。
IFRSにおける「リース会計」に関して、日本において良く言われているのが、「オペレーティング・リースもオンバランスされる!」ということです。
現在の日本のリース会計基準によれば、オペレーティング・リースの会計処理は「賃貸借取引に準じた方法」が認められています。この場合の「賃貸借取引に準じた方法」というのは、簡単にいうと、毎期のリース料をP/Lに計上するのみで、特にB/Sにおいて資産及び負債を認識しなくても良いという会計処理です。つまり、一番手っ取り早い(かつ、馴染みやすい)会計処理であるといえます。このようなオペレーティング・リースは、通常の会社がおこなっているリース取引の多くを占めていると思われます。その意味では、多くの会社では、オペレーティング・リースのオフバランス処理を、当然のようにおこなっています。
それが、IFRSが適用されているとファイナンス・リースと同様にオンバランス処理(すなわち、B/Sにおいてリース資産とリース負債を計上すること)が求められるようになるのです。
とは言え、IFRSにおいて、従来からオペレーティング・リース取引をオンバランス処理することを規定していた訳ではありません。従来は、IFRSにおいても、オペレーティング・リース取引については日本と同様にオフバランス処理することを許容していました。但し、IASBを中心に、一部のリース取引についてオフバランス処理を許容することの問題点については議論されていました。(例えば、2009年3月に公表されたディスカッション・ペーパーには、その旨が記載されています。)
その議論を踏まえた結果、オペレーティング・リース取引についてもオンバランス処理をすべき(言い換えれば、すべてのリース取引はオンバランス処理をすべき)とする、リース会計基準の改訂版に係る公開草案が今年(2010年)の8月に公表されました。
この公開草案によると、新しいリース会計基準は「使用権モデル」という概念を軸に、規定が設けられています。「使用権モデル」によると、リース契約に基づき一定の資産を企業が使用する権利を保有しているということは、そのリース資産を使用することによって将来の経済的便益を得ることであるため、リース資産計上が必要となるということになります。つまり、リース契約上における資産の使用権は、資産性があるので、いかなるリース契約であっても(従来のオペレーティング・リース取引であっても)、オンバランス処理をしなければならないという考え方が、「使用権モデル」の考え方であるということが出来ます。実は、このような考え方は、以前にこのコラムでも取り上げた「フレームワーク」における資産・負債の定義を合致するところでもあります。
また、リース取引について一律オンバランス処理とすることによって、企業側が恣意的に会計処理を歪めないようにする目的もあるようです。IASBの某氏が、よく「私は、オフバランス処理された航空機にはのらない主義である」という発言をしていますが(私も講演で聞いたことがあります)、それは、その辺の企業の恣意性を皮肉ったものでしょう(実際はどうだか分かりませんが・・・)。
このような公開草案が出ましたが、実務界では反対する声も大きいようです。日本においても、新聞や雑誌でも書かれていたように、全てのリース取引についてオンバランス処理をすることに反対する意見が正式に出されている様子です。やはり、事務上の負担や、B/Sに与えるインパクトが少なからずあることが、その理由でしょう。
そのような状況でもありますので、今回のコラムでは、公開草案のさらに詳細な解説は省略いたします。まだ、肝心なところが色々と変わる可能性もありますので。。
あと補足ですが、今回の公開草案以前から言われているポイントとして、IFRSについては数値基準がないということは、今後の日本におけるIFRS対応の観点からは検討すべき課題です。これは、今回の公開草案の内容がどのような方向へ向かおうと変わりません。
ちなみに、IFRSにおけるリース会計基準の改訂版(最終版)は2011年内に正式公表される予定です。その節には、より詳しい解説をさせて頂ければ、と考えております。
今回は、こんな感じでしょうか。。
ということで皆様、良いお年を!

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