第21回 顧客との契約から生じる収益

みなさん、こんにちは
最近、急に寒くなってきましたね。
おかげで、この1週間近く風邪気味の寺田です。

今回は、「顧客との契約から生じる収益」について取り上げたいと思います。
要は、収益認識基準の話です。

ちょっと前になってしまいますが、今年の6月に収益認識についての公開草案が出ました。
その題名が「顧客との契約から生じる収益」(Revenue from Contracts with Customers)となっています。これに対応する旧基準がIAS第18号「 収益」(Revenue)だった事を踏まえると、題名が示すとおり、「顧客との契約」に関してより焦点を合わせた基準となっています。

コメント募集期間(今月22日まで)を経て、来年内に正式に基準化される予定です。
まだ正式決定はされていませんが、重要な論点だと思いますので、公開草案ベースで簡単に内容を解説したいと思います。(とは言え、最終版で 結構変わったりして・・・)

まず、今回の公開草案でのキーワードは「履行義務アプローチ」です。このキーワードは非常に重要なので、是非覚えておいて貰いたいと思いま す。(なんだか、受験予備校みたいなノリですが)
これまでのIAS第18号では、いわゆる「リスク・経済価値アプローチ」が採用されていました。つまり、物品販売に関して言えば、その物品に関 するリスク及び経済価値が顧客に移転した時点で、関連する収益を認識していました。
それに対して、今度の「履行義務アプローチ」は、その名が示すとおり、物品販売契約に係る義務を履行した時点で、収益を認識する考え方です 。(後で、もう少し詳しく解説します)

内容の解説の前に、まず総論的な話を。
今回の公開草案は、IASBとFASB(米国)が共同で行う基準の見直し作業の一環で公表されています。その際に、これまでのIFRSでは収益認識に関 して、IAS第18号「収益」とIAS第11号「工事契約」の2つの基準があったことから、これを機に一本化されることになります。
また、IAS第18号では、収益を「物品の販売」、「役務の提供」及び「利息・ロイヤルティ・配当」の3種類に分けて、それぞれについて規定を設 けていましたが、今回は全て「履行義務アプローチ」の考え方の下で一本化されることになります。(厳密にいうと、金融商品関連の収益は別規定に なります。)

1.「履行義務アプローチ」の概要

「履行義務アプローチ」の全体像は、以下の5つのフェーズに分けて考えることが出来ます。
① 顧客との契約の識別 (identify the contract with a customer)
② 契約における孤立した履行義務の識別 (identify the separate performance obligation obligations in the contract)
③ 取引価格の決定 (determine the transaction price)
④ 取引価格の独立した履行義務への配分 (allocate the transaction price to the separate performance obligation)
⑤ 各履行義務の充足時点における収益の認識 (recognize revenue when the entity satisfies each performance obligation)

公開草案は、概ねこの5つのフェーズの順番に従って、それぞれの規定を示している体裁になっています。
つまり、取引価格を履行義務毎に按分し、それぞれの履行義務が果たされた都度、順次に収益を計上していくという方法です。
これから、上記5つの項目について、ポイントをさらに解説します。

2.「顧客との契約の識別」のポイント

「顧客との契約の識別」という表現はちょっと堅苦しいかも知れませんが、基本的には販売契約(若しくは販売契約書)の事なので、実務上は特 に大した話ではないかも知れません。
但し、留意事項として、公開草案では「契約は書面、口頭又は黙示的な場合がある」旨の記載があります。
会計士(会計監査人)の立場だと、販売契約に関しては、やはり契約書等の文書の裏付けがないと収益計上することに懐疑的になってしまうので すが、公開草案では口頭等でも収益計上を認めています。その際には、ビジネス慣行等も加味した実態判断ということになると思われます。この辺の 実態判断を誤ると、単純に粉飾決算(架空売上)の温床になり得るので、実務上の取扱いには注意が必要だと考えています。

3.「独立した履行義務の識別」のポイント

すなわち、契約で定められた(書面、口頭又は黙示的に)義務を特定する、という事です。
端的な例でいえば、販売品を納品する義務、納品した物品を使用可能にするために据え付ける義務、及び当該物品に係る補償義務といった具合で す。
通常のケースだと、物品の提供義務と付随するサービス提供義務の2種類に区分することができると思います。
また、今では一般的に行われているポイントの付与についても、ここでいう履行義務に該当する可能性があります。ポイントの付与は、将来にお ける財(物品)又はサービスの提供に関する義務の一部を構成するという考え方になり得るからです。
この部分は、基準においても詳細なガイダンス(特に製品保証のケース)がありますが、今コラムでは何となくのイメージを掴んで頂ければ、と 思います。

4.「取引価格の決定」のポイント

この点については、通常は販売契約書に明示している場合が多いと思いますので、実務上は大きな論点はないかも知れません。
但し、留意事項として、公開草案では「将来変動する場合は、見積取引価格にて決定する」旨の記載があります。日本基準における実現主義だと 、「対価の確定」は収益認識要件のひとつと考えられていました。しかし、公開草案では、対価は確定していなくとも合理的に見積ることが出来れば 収益計上することができます。その意味では、日本基準よりも相対的に早期に収益計上(売上計上)出来ることになります。
もうひとつのポイントは、収益の割引現在価値計算です。IFRSの各基準の至るところに出てくる話ですが、収益計上額についても時間的価値や信 用リスクに応じた割引計算が必要となってきます。

5.「独立した履行義務への取引価格の配分」のポイント

ここでは、上記4.で決定した取引価格を、上記3.で識別した履行義務に配分していきます。
単純な例で言えば、販売価格100の製品があり、その製品販売契約における履行義務がAとBの2つあった場合、履行義務Aに95・履行義務Bに5の価 格を配分し、それぞれの義務が履行された場合に、それぞれに按分された取引価格を収益認識することになります。
実際の配分計算では、履行義務毎の「独立販売価格」の比率を使用して按分計算することになります。例えば、上記の例で、履行義務Aの独立販 売価格が90で、履行義務Bの独立販売価格が30の場合は、履行義務Aに75・履行義務Bに25の価格を配分することになります。

  履行義務Aの配分価格 75  = 取引価格 100 ×  90/(90+30)

ここで、ポイントとなってくるのが「独立販売価格」です。上記でいう履行義務AやBが、実際にそれぞれ別個の製品(又はサービス)として販売 しているケースでは問題ありませんが、そうでないケースも非常に多いと思われます(特に、製品販売に付随するサービス等については)。例えば、 製品保証とかポイントの付与とか・・・
その場合には、企業が合理的に「独立販売価格」を見積もる必要があります。公開草案では、合理的な見積方法として、「見積コストにマージン を付加するアプローチ」と「修正市場評価アプローチ」が例示されています。いずれにしても、実務上適用する場合には、結構な悩みどころだと思い ますので、慎重な検討が必要です。(見積方法の詳細については、今回は割愛させて頂きます。。。)

6.「各履行義務の充足時点における収益の認識」のポイント

ここでのキーワードは、「支配の獲得」です。是非、覚えておいて下さい!!
公開草案では、「履行義務の充足時点とは、顧客が契約の対象となる財又はサービスに対する支配を獲得した時点である」旨で定義されています 。つまり、顧客が財又はサービスの支配を獲得した時に、販売元は収益認識する訳です。
それでは、どのような場合に、顧客が財又はサービスの支配を獲得したと言えるのでしょうか?
公開草案では、まず原則として、「財又はサービスの使用を指図する能力を有し、かつ、それから便益を享受する能力を有する場合に、顧客は財 又はサービスの支配を獲得する。」としています。
その上で、顧客が支配を獲得している指標として、以下の4つが例示されています。
・ 顧客が無条件の支払義務を負っている
・ 顧客が法的所有権を有している
・ 顧客が物理的に占有している
・ 財又はサービスのデザイン又は機能が顧客固有のものである
基準上のエッセンスは、上記のとおりですが、後は企業実態やビジネスモデル等を総合的に勘案して、各社毎(事業毎)に、適切な収益認識基準 を検討することになると思われます。

以上が、「履行義務アプローチ」のポイントです。 原文は、結構膨大な量になりますが(「結論の背景」を含めると尚更)、何となくのイメー ジは掴んで頂けたでしょうか?

今後は、我々監査法人としても、対クライアントレベルでより具体的な検討・研究を進めていく所存でございます。

という事で、ちょっと長くなりましたが、今回はこの辺で・・・

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