第13回 連結財務諸表

みなさん、こんにちは。
というよりも、明けましておめでとうございます。
早いもので、この連載コラムも2年目に突入してしまいました。
今年もよろしくお願いします!?
今回は、連結財務諸表について触れたいと思います。
そもそも、仮にIFRSが強制適用になった場合に、連結財務諸表は少なくとも対象となると言われています。ので、無視できないテーマと言えるでしょう。
国際会計基準上では、IAS27号「連結財務諸表と個別財務諸表」(Consolidated and Separate Financial Statements)で関連事項が規定されています。
今回は、以下の3つのポイントについてご説明します。
・連結範囲
・経済的単一体説と親会社説
・子会社の決算日の統一
(連結範囲について)
連結範囲については、SPE(特別目的事業体:Special Purpose Entities)の取扱いこそ、日本基準と国際会計基準の相違はあるものの、それ以外については「実質支配力」基準にて連結範囲を決定する点では両者には大きな相違はないものと考えられます。
但し、「実質支配力」基準については、実質的には大きな相違はないものの、その書きぶりが異なっているので留意は必要です。また、IAS27号では、日本基準における「連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用等に係る監査上の取扱い」に相当するような、明確な基準に基づいて重要性を検討した上で連結対象を決定する類の規程はありません。
(経済的単一体説と親会社説)
会計学の観点では、連結財務諸表を作成するにあたって、当該企業集団をどのように考えるかによって連結会計処理が一部異なってきます。この考え方として、経済的単一体説と親会社説の2つがあります。両者の定義は以下のとおりになります。
経済的単一体説 : 企業集団は親会社と少数株主がともに支配しているものであり、企業集団の実態を反映した連結財務諸表は親会社および少数株主双方のために作成されるべきとする考え方
親会社説 : 企業集団は親会社が支配しているものであり、企業集団の実態を反映した連結財務諸表は親会社の株主のために作成されるべきとする考え方
【参照:プロフェッショナル用語辞典「会計・監査」 監査法人A&Aパートナーズ編著】
日本基準は親会社説の考え方を採用していますが、IFRSは経済的単一体説を採用しています。
この結果、
① 少数株主持分及び少数株主損益の取扱い
② のれん計上額
③ 子会社株式の追加取得時及び一部売却時の会計処理
の3つが、大きく異なると思われます。
① 少数株主持分及び少数株主損益の取扱い
経済的単一体説のもとでは、少数株主持分は企業集団の内部者とされることから、連結貸借対照表上では「少数株主持分」として計上されず子会社資本に含まれ、少数株主損益は連結損益計算書上では「税金等調整前当期純損益」に含まれます。
親会社説のもとでは、少数株主持分は連結貸借対照表上では株主資本と区別して計上され、少数株主損益は連結損益計算書上では税金等調整前当期純損益に税金関連項目とともに加減される損益項目となります。(すなわち、「税金等調整前当期純損益」に含まれません。)
また、日本基準でいう「少数株主持分」は、IFRS上ではnon-controlling interest(非支配持分)という用語が用いられています。その用語のニュアンスの違いも、両者の連結概念の差異を端的に表しているものと思われます。
② のれん計上額
日本基準では、いわゆる「購入のれん方式」によってのれん計上額を算定します。つまり、購入対価と対応する持分増加額との差額をのれんとして認識します。
IFRSにおいては、「購入のれん方式」と「全部のれん方式」の選択適用が認められています。「全部のれん方式」とは、親会社による支配の獲得時点で親会社持分と少数株主(非支配)持分の双方からのれんを認識し、貸借対照表に計上する方法です。
単純な一例を挙げると、純資産700の会社の持分80%を800で購入した場合、
購入のれん方式 : 800-(700×80%)=240
全部のれん方式 : 800÷80%-700=300
ののれんが計上されます。
このケースでは、全部のれん方式は、少数株主持分相当額も親会社持分の購入単価で評価する前提で、計算しています。
③ 子会社株式の追加取得時及び一部売却時の会計処理
親会社説(日本基準)では、子会社株式を追加取得した場合は、親会社持分の増加に伴う追加的なのれん額を、連結貸借対照表に計上します。また、子会社株式を一部売却した場合には、その売却損益相当額を、連結損益計算書に計上することになります。
しかし、経済的単一体説(IFRS)では、そのような取引は資本取引として会計処理を行い、のれんや子会社株式売却損益は連結財務諸表上では計上されません。もちろん、子会社株式の全部または大部分を売却した結果、当該子会社の実質支配を喪失した場合(つまり、連結対象でなくなった場合)には、売却損益を計上することになります。しかし、そうでないならば、経済的単一体説では支配株主と非支配株主は同等の立場であると位置づけられるので、単に同等の株主間の持分変動が起こったものとして連結会計処理がなされることになります。
(子会社の決算日の統一)
実質的には全く両者の差異がないとも言えますが、個人的に気になるのでちょっと私見も含めて触れさせて頂きます。
この点に関する各基準の書きぶりは以下のようになります。
・日本基準
Φ 親会社の会計期間に基づき、年1回一定の日をもって連結決算日とする。
Φ 子会社の決算日が連結決算日と異なる場合には、子会社は、連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続きにより決算を行わなければならない。
Φ 決算日の差異が3カ月を超えない場合には、子会社の正規の決算を基礎として、連結決算を行うことができる。(決算日の差異間の重要な不一致は要調整)
・IAS27号
Φ 連結財務諸表の作成に用いる親会社及び子会社の財務諸表は、同日現在で作成しなければならない。
Φ 子会社の決算日が連結決算日と異なる場合には、実務上不可能な場合を除いて、連結のために、親会社の財務諸表と同じ日現在で追加的な財務諸表を作成する。
Φ 連結財務諸表の作成に用いる子会社の財務諸表を、親会社と異なる日現在で作成する場合には、その差異は3カ月を超えてはならない。(決算日の差異間の重要な取引は要調整)
個人的には、上記で下線を付した「実務上不可能な場合を除いて」の考え方が気になります。
例えば、3月末を連結決算日としている会社で、12月末の海外子会社の財務諸表を連結に取り込んでいるケースは結構多いと思いますが、そのような状況が「実務上不可能な場合」に相当するのかは留意が必要なように思われます。
実務上の煩雑性を勘案しても、少なくとも1カ月前(上記の例で言えば、海外子会社の2月の)仮決算の必要性は検討した方が良いかも知れません。少なくとも、なるべく直近の決算データを取り込んだ方が適切な連結財務諸表が作成されるという理屈になりますし。
その辺は、今後の日本の会計業界でも何らかの検討がされていくものと思っています。(そのままの状況で、対応しなくても良い風潮になるかも知れませんが・・・)
と、連結財務諸表に関するポイントはこんな感じでしょうか??
いずれにしても、連結財務諸表関係は、最近でも日本の会計基準の改訂が進んでおり、着々とコンバージョンが為されている論点です。なので、近い将来に「経済的単一体説」を取り入れた連結会計基準が公表されることになると思います。
ということで、今回はこの辺で。。。

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