5月に入り新入学生や新入社員の方もそろそろ落ち着いてきた時期だと思います。私の妹などもこの春から大学一年生、そろそろバイトはどうしようかと毎日雑誌を眺めてああでもないこうでもないと唸っている状況です。
さて、このアルバイトですが私実は学生の頃にしたことがありません。そのまま卒業・就職という流れで、それらしいことをしたのは前職を辞めてからだったりします。
とはいってもアルバイトではなく何かと話題の派遣社員として継続ではなく時間の自由がきくように短期単発のものばかり。仕事を辞めたばかりでしたのでしばらく休もうか、けれど働かないわけにはいかない、という上での選択でした。
男性と比べると女性の方が仕事は多いらしく、いくつかある仕事のうちメインでやっていたのが「マネキン」と言われるスーパー等で試飲試食、新商品の紹介等を行うデモンストレーターでした。初めて聞いたときは「マネキン? なんじゃそりゃ」と疑問の嵐でしたが言われてみれば小さい頃からなじみのあるこのお仕事。試食しては母に「買って」とせがんだのを思い出します。
このお仕事、商品をお勧めするのでスーパーなどのフロアに一人で立ち、大きな声を上げなければなりません。「新発売の×××はいかがですかー。ただいま試食を行っておりまーす!」人を集めるために必要ですがこれがなかなか恥ずかしい! 慣れないうちはなかなか声が出せませんでした。しかし中途半端な声で尻すぼみに話すというのもみっともないもので、気がつけばそれなりに声が出せるようになっていました。そして慣れてくるとこれがなかなか面白い! お菓子などを扱っていると子どもたちが、お酒を扱っているとお父さんお母さんがやってきます。商品知識は事前に頭にたたき込んであります。それをお話ししつつお勧めして……という具合にしているとあっという間に時間が過ぎてしまいます(といっても人がいないと非常に時間がながく感じられてつらいです)。商品が売れればよかった! あまり芳しくなければ何がいけなかったのか、そういったことを考えつつ、しばらくこの仕事を続けていました。
充電期間というのでしょうか、それが終わり新たな職に就いてからこのマネキンをすることはなくなりましたが、この経験のおかげか人前で話すことに慣れたような気がします。お客様の様子を見つつ、どうやってお勧めすればいいのか、それともご縁がなかったのか、そういったことを考える癖もつき、元々高くはないですが対人スキルが上がったとも思えます。
最初こそ不安で仕方なかったこのマネキン。しかしやってみると意外に合った上、身につくこともあった。知らない、慣れないことでも何事も挑戦するものだと強く感じた経験でした。
休日スーパーに行くと至ることところでマネキンの姿を見かけます。「私も以前はやってたのよ!」という仲間意識でしょうか、なんとなく商品をカゴに入れては帰りの袋を重くしてしまいます。……一度ウィンナーを焼きたかったなあ(ビールのお勧めがほとんどだったので)
福沢 育子(ふくざわ いくこ)
ソフトウェア開発業を経てAAPへ。事務所のシステムやPC関係のお手伝いをしています。