とある年の4月、近所のおじさんからメダカを5匹もらった。
メダカを飼うのは初めてだったので、ホームセンターで飼育セットを買って、自宅の窓際で飼い始めた。
6月になるとメダカのお腹に透明な粒々が付いているのに気付いた。なんだろうと調べてみると、メダカの卵だった。この時期になるとメダカは産卵期になり、たくさん卵を産むらしい。さらに調べると、その卵を産み付けるための水草が必要なことがわかり、再度ホームセンターへ水草を買いに行った。
ホームセンターのメダカコーナーの近くにはペットショップも併設されており、ホームセンターに立ち寄った際に犬や猫を眺めることはよくあった。
その日もガラス越しに犬を眺めていると、子供たちが「可愛い~」といって、1匹のチワワに近づいた。色が白黒の生後2ヶ月の子犬で、確かに可愛かった。
すると、その日に限って店員さんがチワワを抱えて、子供たちに抱っこさせてくれたのである。犬をちゃんと抱っこするのが初めてだった子供たちは大喜びで、交互に膝の上に乗せては、犬をもふもふ撫でていた。私も昔、犬を飼っていたことがあり犬は大好きなので、その姿はとても微笑ましかった。
少し経つと、店員さんが私に声をかけてきた。
「毛の長い犬と短い犬、どちらがお好きなんですか?」。
私は今まで考えたことも無かったが、直感で「毛の長い犬ですかね~」と答えた。
すると、店員さんはさらに質問を投げかけてきた。
「小さい犬と大きい犬、どちらがお好きなんですか?」
この質問責めに、私は何か違和感を感じた。もしかしたら我々が犬を飼いに来たと思っているのでは。
店員さんの名札には「研修中」の文字が書いてあった。おそらく研修で習ったのだろう。犬を飼ってもらうコツ、犬をすぐに抱っこさせてあげる、お客さんが欲しい犬の特徴をしっかりと把握する。
これを実践するため、子供が興味ありそうな犬をすかさず抱っこさせてくれ、私には犬の特徴を聞きにきたのである。
ただ、今日は犬を飼いに来たわけではないので、妻は「今日は抱っこするだけだよ~」、私も「もう少ししたらバイバイだよ~」と子供たちに伝え、犬とのじゃれあいが終わるのを待っていた。
30分くらい経過しただろう。次に行きたい私は「そろそろ行くよ~」と言いながら、妻の方を見た。すると妻から衝撃の一言が。。。
「えっ、どうする??」
表情からみて、どうやって子供たちから犬を引き離すか、のどうするではなかった。
犬を飼うかどうか、のどうするであった。
いやいや、犬を飼うには家を整理する必要があるし、毎日散歩に行く必要があるし、ご飯やトイレのお世話もあるし、、、 犬を飼ったことがある私には可愛いだけでは飼えない苦労をよく知っていた。
「今日は犬を飼うために来たわけじゃないし、お世話するのは大変なんだから、今日は帰るよ!」
私は当初の目的を果たすため、次に向かいたかった。
子供たちからチワワを受け取って店員さんに返そうとすると、別の店員さんが近寄ってきた。
「来週にはもうこのワンちゃんいないと思いますよ~」
子供たちも「エー!!パパ、このワンちゃん来週にはいないんだってー!!」
確かに、犬を飼っている人は最近たくさんいるので、その可能性は高いだろう。でも、それだけで犬を飼うなんて、そんなすぐに判断はできない。
「そうかもしれないけど、本当に犬を飼うのか、ちゃんと決めてからまた見に来ようね!」
私は至極当然のことを子供たちや妻に伝え、その場を去ろうとした。
するとなんということでしょう。
また別の店員さんが近寄ってきて、こう言ってきた。
「ワンちゃんとの出会いは一期一会ですよ~」
気付くと、私の周りは全員敵となっており、犬を飼うかどうかは私の判断のみに委ねられる状況となっていた。
その後も新たな店員の登場や押し問答が続き、2時間経過した私は、契約書にサインをしていた。
以上、「メダカの水草を買いに行ったら、犬を飼ってしまった」お話でした。(実話です)
現在、私が犬を一番可愛がっていることは言うまでもありません。
今年も皆様にとって良い一年となりますように。
H.Y
最近キャンプ始めました