A&A blog

たった11秒の出来事

02.05

2017年11月18日にイギリス・北アイルランドのベルファストで行われた世界ボクシング機構(WBO)バンタム級タイトルマッチで、チャンピオンのゾラニ・テテが世界戦最速記録となる11秒で、同級3位の挑戦者シボニソ・ゴニャからTKO勝ちをおさめました。サウスポー同士の対決、開始のゴングからわずか6秒のことでした。テテの右フックがゴニャの顎をとらえ、ゴニャはリングに大の字、レフェリーはカウントをはじめましたが、ゴニャがピクリとも反応しないため、途中でカウントを止めました。
このニュースをスマホで見た私は、すぐに試合の動画を見ましたが、結末を知っていても何が起こったのかよくわかりませんでした…。そこで、一時停止とスロー再生を駆使して何度も再生。すると、テテは終始ゴニャの顔に目線を定めており、わずかに腰を下ろすと同時に左肩が動いた瞬間、ゴニャの左手が下がり、がら空きとなった顎に強烈な右フックを打ち抜いていました。素人目線のボクシングファンとして、すごい出来事が起きたなと感心しました。
その後、この試合や両選手のことを調べ、すごいなと思ったことが2つあります。
1つは試合後のテテの表情です。試合終了の合図を聞いたテテは表情一つ変えず、涼しげな表情でリングの中にいました。人間的な目線で見ると衝撃的な出来事を成し遂げたにもかかわらず、驚きや喜びの感情をおさえ、冷静さをまとったチャンピオンとしての毅然とした態度、動物的な目線で見るとまるで狩りを終えた獣のようでした。今年は日本を代表するボクサーである井上尚弥との試合もささやかれており、実現すれば非常に楽しみなものになると思います。
もう1つはズールー族の王子であるというゴニャの生い立ちです。ゴニャの父は7人の妻を持ち、ゴニャは38人兄弟だそうです。この試合の前に、ゴニャは自分のルーツを誇りに思い、タイトルを獲得することで部族に誇示できることを確信していると語っています。自分の生い立ちから、自分が成し遂げなければならないことを自ら背負い、伝統あるズールー族が誇り高き部族であることを世界に知らしめる大きなチャンスだと思っていたのです。
選手がどれだけつらい練習を重ね、それぞれの思いをのせ、やっとたどり着いた試合であっても、たった11秒で終わってしまうのもボクシングの醍醐味だと思います。選手にとってはそれぞれの11秒、その後の人生に大きな影響を与える11秒だったと思います。

松本 浩幸(パートナー)
<プロフィール>
1982年8月17日生まれ
2009年1月 監査法人A&Aパートナーズ入所
<モットー>
興味がないことは全く気にしない

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