監査法人A&Aパートナーズも丸2年を迎えましたが、会計士補の時代から通算で私も丸20年を迎えようとしています。過去のブログを見ても我々のお仕事の話は皆無なので、過去の自身の経験したお仕事を振り返って印象に残っていることを一部ご紹介します。
監査の手続に「実査」という手続きがあります。簡単に言うと、現金等を監査人が実際に数えてみて、帳簿の数字等と合っているかどうかを確認する手続きです。この「実査」についての印象に残る出来事をご紹介します。
1.初めての実査
入所して現場へ出て2週目のこと。
主査「君、明日の朝、9時前に来て(注1)現金数えてくれない?」
私「分かりました。どうやればいいんですか?」
主査「現金を数えてくれればいいんだよ。」
私「・・・。」
当時は、監査手続書なるものもなく、何をどうすれば良いのか分からない状態で、新人にこの回答でした。
翌朝、9時前に会社へお伺いし、現金実査なるものにチャレンジ!しかし、そこは某金融機関の某支店だったこともあり、数える現金の単位が1億円ぐらいありました。現金カウンターを利用させていただき、何とか無事終了。初めての現金実査が、今まで見たことの無かった金額で印象に残りました。
(注1)通常10時に会社へお伺いすることが多いので、9時前というのは、結構早い時間です。
2.IPO準備会社の実査
入所して数年経過した頃、IPO準備会社(注2)が監査契約後、初めての現金実査を受けた時のこと。
私「では、金庫の中の現金を数えさせてください。」
担当の女性「わかりました。この中に入っています。」
差し出された手提げ金庫の中の現金を私は数えていく。
私「この紙で包んでセロハンテープで留めてある1円玉の袋を開けて数えても良いですか?」
担当の女性「はい、どうぞ。20枚入っています。」
数える私。
私「すみません。19枚しかないんですが。。。」
担当の女性「・・・。」
その後、1円を現金過不足として雑損失処理をしていただきましたが、無事、数年後IPOを果たしました。
(注2)株式上場(当時は店頭公開含む)を目指す会社のこと。
3.ありえない金額の実査
入所から大分経過した時のこと。
主査「現金勘定が○○億円もあります!」
私「えっ?聞いてないし!今からでも現物を確認しないとまずいじゃん!」
何故、保有していたかの理由はさておき。
私「一体こんな金額、何処に保管されているんですか?」
会社担当者「△△倉庫(注3)に保管されています。××銀行がわざわざ日銀まで行って、輸送してくれました。」
日程を打ち合わせし、当日、会社担当者や主査と△△倉庫へ向かう。
いざ、紙幣とご対面。こんな金額の現金には2度とお目にかかれないと思い、感慨深い気持ちになりました。また、今まで100万円の束を10重ねた1000万円の束なら見たことありましたが、更に2億円の単位でビニール包装されていることは、ここで始めて知りました。
(注3)一般の運輸倉庫とは異なり、厳重な造りと厳重な警備体制がとられていますので、くれぐれも変な気は起こさぬように!
ここでご紹介した「実査」は監査手続の一部ですが、監査を実施していると面白いこと?に沢山遭遇します。しかし、守秘義務の関係もございますから多くは話せませんので、今回はこの辺で。
加賀美 弘明(かがみ ひろあき)
最近思うこと:何かと難しい時代なので、バブル時代を懐かしく思います。