第4話 「実質基準」とは

えー、安藤エイタです。今日は、上場審査の「実質基準」の概要についてお話しします。

諸福あゆみ
安藤君、ホントにウチでバイトしてたの!?
安藤エイタ
ええ、大学の時に工場の方で。当時の社名は『諸福食品』だったので、しばらく気づきませんでしたよ
諸福あゆみ
ということは、別に安藤君から志願して当社の担当になったというわけじゃないのね
安藤エイタ
社長の平方の指示ですね。あの頃は、先代にはずいぶんかわいがっていただきましたよ。あ、そうだ。当時のあゆみ社長の写真を見せられて、「娘をどうだ?」なんて言われたこともあるんですよ
諸福あゆみ
ホントに!? よっぽど気に入られたのね。でも、娘の恋愛まで、自分の思い通りになると思ったら、大間違いなんだから
安藤エイタ
そう言えば、恋愛と上場審査って似てると思いませんか?
諸福あゆみ
何よ、藪から棒に
安藤エイタ
ほら、恋愛って、外見より中身とか言いますけど、やっぱり最初に見た目がタイプかどうかという判定があると思うんですよ。そして、その判定をクリアした人の中身を知ることによって、その人を好きになるみたいな
諸福あゆみ
つまり、見た目が「形式基準」で、中身が「実質基準」と言いたいのね。じゃあ、上場審査では、どういう基準で会社の中身を審査されるのかしら?
安藤エイタ
市場によって多少違うんですが、例えば東証一部の場合ですと、審査の項目が5つあるんです
諸福あゆみ
恋愛だったら、ずいぶん理想が高いわね。それで、その5つって?
安藤エイタ
一つ目は、「企業の収益性および継続性」です
諸福あゆみ
ふーん
安藤エイタ
二つ目は、「企業経営の健全性」です
諸福あゆみ
それから
安藤エイタ
三つ目は、「企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性」です
諸福あゆみ
なるほど
安藤エイタ
四つ目は、「企業内容等の開示の適正性」です
諸福あゆみ
はいはい
安藤エイタ
五つ目は、「その他公益または投資者保護の観点から取引所が必要と認める事項」です
諸福あゆみ
それぞれの項目で具体的に何が必要なわけ?
安藤エイタ
例えば、一つ目の「企業の収益性および継続性」なら、継続的に事業を営んでいて、収益基盤が安定していることですね
諸福あゆみ
継続的ってどのぐらいなの? それに、安定ってどういう状態のこと?
安藤エイタ
では、こう考えましょう。社長は、どういう男性が好みですか?
諸福あゆみ
な、なんなのよ、突然
安藤エイタ
いいから、教えてくださいよ
諸福あゆみ
そうね……まじめで、頭がよくて、話が面白くて、やさしくて……
安藤エイタ
「まじめ」って、どういう人ですか?
諸福あゆみ
誠実な人ってことよ
安藤エイタ
じゃあ、「頭がいい」というのは? 学歴ですか? それとも、英語が話せるとか?
諸福あゆみ
そういうのじゃなくて、話してれば、なんとなくわかるものでしょ
安藤エイタ
ほら、具体的にどうというのは決められないですよね。似たようなものなんです、「実質基準」も。結構あいまいなんですよ
諸福あゆみ
ま、だから安藤君のような人たちがいるってことね
安藤エイタ
まかせてください
諸福あゆみ
ところで、安藤君
安藤エイタ
なんでしょうか
諸福あゆみ
バイト時代に、パパから私のことすすめられた時、実際どう思ったのよ?
安藤エイタ
形式基準の方で慎重な審査が必要かなと……

(つづく)

第5話 求められるのは安定か成長か

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