IPO準備会社は退職給付会計の適用に向けて準備を進めよう

執筆者:八丁宏志氏(株式会社IICパートナーズ 取締役)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

退職給付会計が始まってから16年が経ちますが、IPOや合併などで、これから退職給付会計を適用しようと検討している会社にとっては、未だに敷居の高い会計分野のひとつです。
その為、IPOにおいてはショートレビュー時に思わぬ費用増や作業負担に、担当者は勿論、経営者も頭を抱えることをよく見かけます。
退職給付会計の敷居を高くしているのは、専門用語と特殊な会計処理が要因として考えられますが、一番は退職給付債務の存在だと思います。
そもそも、退職給付会計は、企業における退職金や企業年金の支払義務を財務諸表に適切に反映させる事を目的としており、中でも退職一時金制度や確定給付企業年金制度といった確定給付型の退職金制度においては、会社が有する支払義務の金額として退職給付債務を引当、計上する事が求められます。
この退職給付債務は、計算対象となる従業員が300名を超えるまでは簡便的に期末要支給額(期末時点の退職金の合計)を用いる事が認められていますが、300名を超えた場合は原則的に数理計算する方法に移行する必要があります。
その為、当該会計期においては、期末要支給額と退職給付債務の差額を一時の損益として費用処理する事になります。
ここで注意が必要なのは、その差額です。
一般的に退職給付債務は期末要支給額よりも高くなる傾向があり、30%以上の差額が生じる事も稀ではありません。
特に、自己都合退職した際の減額率が高い場合や、退職金の支給条件として勤続○年以上といった制限・定年加算金などを設けている退職金制度は、差額が生じやすいので、一層の注意が必要です。
そうなると「退職給付債務には概算でどれぐらいになるか?」という声が聞こえてきそうですが、残念ながらその問いにお答えする事はできません。退職給付債務は確率・統計を用い、一定の前提条件を設定して計算するものなので、一度本格的な計算をしない限り、数値を把握する事ができないのです。
また、退職給付債務の計算には、早くても一ヵ月程度の時間がかかります。
今、従業員が300名を超えていなくても、今後の事業・人員の拡大を検討されているのであれば、退職給付債務を一度計算する事を強くお勧めします。退職給付債務の計算は、専門のコンサルティング会社や金融機関に依頼する事ができますので、まずは彼らにご相談されてはいかがでしょうか。

2017/1/13 発行 IPOかわら版【第31号】掲載

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