より有効に活用される内部通報制度にするためには

執筆者:早川真崇氏(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 シニアパートナー)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

内部通報制度とは、一般に、企業等において、不祥事や不正行為などの法令違反行為等のコンプライアンス上問題となる事象やそのおそれがある状況を知った従業員等が、当該企業によって設けられた窓口等に通報することができる仕組みのことを指します。
昨年発覚した㈱東芝における不適切会計などの企業不祥事では、外部の指摘により発覚しており、内部通報制度が十分機能していなかったと指摘されています。また、平成25年に公表された消費者庁の報告書によれば、3000人超の従業員を抱える大企業の96.8%で内部通報制度を既に導入済みであり、かつ、88.1%の導入事業者が「違法行為その他様々な問題の未然防止・早期発見に資するため」を導入目的・理由と回答しています。にもかかわらず、実情は、①導入事業者の過去1年の通報件数は0件という回答が45.9%と最も多く、②通報内容を見ても、「人間関係」、「人事労務関係」、「職場環境」という順に多く、「法令違反」はわずかに4.5%にとどまっています。
内部通報制度が有効に活用された場合、①法令違反等の未然防止、②法令違反等の早期発見、③早期発見後の迅速かつ的確な対応を通じた自助作用・機能の発揮による企業価値の早期回復・再生という効果が期待できます。
そのためには、各企業の現状について、①通報件数がない、又は少ない段階、あるいは、②通報件数は相当数あるものの、その中に法令違反などの重要な情報が含まれていない段階のどちらであるのかを見極め、各段階に応じた改善策・是正策を検討する必要があります。①の段階であれば、通報した際の匿名性の確保や通報者の不利益な取扱いの禁止が徹底されているか、あるいは、これらの点が周知され、社員が安心して活用できる環境が整備されているかなどを検証する必要があります。他方、②の段階であれば、制度自体は活用されているにもかかわらず、なぜ法令違反等の重大なコンプライアンスリスクに関する情報がもたらされないのか、その原因を特定した上で、その結果に応じて、例えば、通報のインセンティブを与えるための「社内リニエンシー」や「報奨制度」などの導入、通報の不安を除去・軽減するための外部窓口や専門会社の活用などを検討されることが有用と思われます。
皆様の会社でも、内部通報制度の現状や段階を点検し、今一度、制度の導入目的・理由に立ち返って、制度の構築や運用上の課題を洗い出し、対策を検討されることをお勧めいたします。

2016/7/15 発行 IPOかわら版【第29号】掲載

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