株式公開検討時の優先実施事項

執筆者:森太樹氏(税理士法人鶴田会計 公認会計士/M&Aシニアエキスパート)

※所属・肩書は掲載当時のものです。

2015年の新規株式公開数は92社となっており、2009年の19社から回復基調にあります。2016年も同水準(100社弱)が見込まれており、今後も一定数の規模で推移すると予測されています。
株式公開を考える場合、実施すべき事項は、多岐にわたり、膨大な量にのぼります。
・ビジネスモデル確定:事業基盤強化、関係会社・関連当事者整理
・株主決定:資本政策
・機関・組織決定:コーポレートガバナンス、経営管理組織整備
・事業計画策定・運用:ヒト・モノ・カネの配分、PDCAサイクルの運用
・業務プロセス決定:内部統制整備、内部監査によるチェック
・開示体制構築:会計基準変更、月次決算実施、管理会計導入
・規程整備:文書化 等々
限られた経営資源の中で、実施すべき優先事項は・・・?経営者の最大の悩みどころです。そこで、取り組むべき最優先事項として以下の2つをお勧めします。
①ショートートレビューの実施
ショートレビューとは、経営管理、財務面等、様々な側面から会社の現状分析を実施し、株式公開に向けた問題点、課題、改善スケジュール・案等を報告書として結果提示します。
現状(株式未公開の状態)と目標(株式公開の状態)のギャップ(問題)は?何をすべき(課題は何)か?問題解決では当たり前の手法です。
監査と異なり、安価、短納期で実施可能であり、取り組むべき全体像を明らかにできるため効果的な手段です。
②事業計画の策定・運用
上場直後の業績下方修正や不正発覚が相次いでおり、投資家の信認回復に向けて、業績予想(前提、根拠)が審査ポイントとして、より重要性を増しています。(2015年に日本取引所グループが「最近の新規公開を巡る問題と対応について」において、上場直後の業績予想の大幅な修正への対応等を公表。)
事業計画策定、実績測定、評価、修正行動設定のPDCAサイクルを回しながら目標への到達を短期間で実現することは困難です。正確性(株式公開後、予想と相違する場合、修正報告が必要)、合理性(ビジョン、事業環境、戦略、実行体制・計画が具体的で整合性あるか)が要求されると同時に、通常、一年に一回しか策定機会がないからです。繰り返し実行し、実現性を高めるためには、早期の取組が必要です。
①と②は入口であると同時に必須事項です。特に②については、企業の根幹となるべきところですが、ノウハウがない場合、外部専門家を利用することも検討してはいかがでしょうか?

2016/4/11 発行 IPOかわら版【第28号】掲載

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