失敗しないためのM&A

執筆者:齋藤文寛氏(株式会社ジェムコ日本経営 エグゼクティブ・ディレクター)

ジェムコ日本経営:1968年創業の独立系総合コンサルティング会社で、事業分析および業務改善を得意とし、上場企業を中心に国内外延べ4,500社の実績を誇る。M&Aにおいては、ビフォア、アフター含めたフルサービスを提供。また、諸外国の企業、あるいは政府系ファンド等の対日投資アドバイザーとしても定評がある。

※所属・肩書は掲載当時のものです。

今や上場企業の過半数が中長期事業計画において、国内外のM&A戦略を組み込む時代になりました。

然しながら、M&Aを実行した企業の多くが期待した結果を得られていないのも事実です。企業を統合するということは、人間でいうと非常に難しい外科手術、例えば移植手術のような、複雑な血管や神経をつなぎ合わせて、企業をより強く元気にする気の遠くなるような作業です。ですから、まずは手術前に自分も相手の企業も良く検査することが必要です。

情報収集とアドバイザー選択

欧米企業が専門会社を使って徹底したプレ調査を行うのに対して、日本企業は簡単な事業分析・財務分析で進めている傾向が見受けられます。

最近は、自社内にM&Aの専属部隊を置く企業も増えて参りましたが、多くの企業は外部のM&Aアドバイザーにサポートを依頼します。

このアドバイザーは、その派生から大分すると“銀行系”“証券系”“監査法人系”“コンサル系”“独立系”があり、それぞれに得意分野、特徴があります。

選任したアドバイザーによって提供される候補企業のリストや企業情報、あるいはトランザクションサービスに違いがあることに注意し、目的に合うアドバイザー選びをすることが大切です。

失敗しないM&A 1.目的・ビジョン・プラン

アドバイザー等から提供された情報や分析結果に基づき比較、検討を進めていきます。

M&Aの成功を統合効果の実現とするならば、お互いに何を持っているのか、何が補完できるのか、そしてどのような効果が想定できるのかを充分検討することが必要です。

まずは自社の事業の状況をできるだけ細かく分析し、最も相性の良い候補先を選定します。

その上で、できる限り綿密で具体的な効果シミュレーションを行うことが重要です。

事業分析については、次の機会でお話したいと思いますが、実際の現場では、70~90項目に分けて事業を可視化し、統合効果を想定します。

そして、統合による期待効果という目的と、新会社の将来像であるビジョンができたら、それを実行するためのプロセスを示したプランつまり、目標達成のためのM&A計画を立てます。その際大切なことは、常に誰もが納得する統合シナジーという強い物差しをもって計画を構築することです。

このことが、結果として、交渉を成功に導き、そして統合作業におけるムダな経営資源のカット、あるいは効果実現のスピードアップにつながります。

失敗しないM&A 2.コミュニケーション

あとは、トップ自ら相手企業と自社のステークスホルダーに対してプランとビジョンを伝える準備をし、ファーストコンタクトを迎えます。この準備を怠ると自社の優位性や価額等の条件に影響があると同時に、交渉の長期化、果ては決裂という事態になることもあります。

交渉において成功のカギは、どれだけ相手に同じビジョンを見せることができるかということですので、しっかり伝えて行きましょう。

失敗しないM&A 3.物差し、ルール、評価体系

交渉が完了し、無事調印を済ませた後は、いよいよ統合作業に入ります。まずは、統合計画に沿った決定ルールや評価体系を組み立て、ベクトルのズレが出ないようにガイドラインを引きます。それでも様々な決めごとや迷いが生ずる統合作業においては、効果実現という強い物差しを持ってすべてを決定することが大切です。

失敗しないM&A 4.クイック・サクセス

それと同時に、長期間におよぶ膨大な作業の中で社員一人一人の意欲を落とさずにゴールするためにはマインド・ケアが大切です。すなわち、「会社は良い方向に向かっている」という実感をもつためのクイック・サクセス、例えばマラソンで言うところの給水所を要所にちりばめることが早期実現のコツです。

失敗しないM&A 5.リーダーシップ

あとは、トップマネジメントを先頭に、効果実現という物差しで選出された各チームのリーダーによって、ベクトルを引き上げる、あるいは時として押し上げる、強力なリーダーシップでゴールを目指すのです。

2013/01/15 発行 IPOかわら版【第15号】掲載

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