第35回 IFRSの任意適用の積み上げに関する取組み

みなさん、こんにちは。

弊法人のホームページがリニューアルされたことを記念して(気付かれた方はいらっしゃるでしょうか・・)、久しぶりに当コラムを更新したいと思います。

といっても、非常に大きなトピックはこれと言って無いのですが、そのようななかで今回は、平成26年11月21日にIFRS対応方針協議会より公表された「IFRSの任意適用の積み上げに関する取組み」について、簡単におさらいしたいと思います。

IFRS対応方針協議会は、IFRSに関連する我が国の市場関係者の意見の募集等を目的とし、金融庁及びFASF(財務会計基準機構)が事務局となり、経団連・会計士協会・証券アナリスト協会・東京証券取引所・ASBJ(企業会計基準委員会)・経済産業省・法務省から構成されます。今後の日本におけるIFRS導入については、この協議会が中心となって議論されていくことになります。

当該「IFRSの任意適用の積み上げに関する取組み」は、第34回で取り上げた「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」において、
・強制適用の是非は、未だその判断をすべき状況にない。
・但し、任意適用をする会社を増やすための努力は鋭意行う。
という日本のスタンスが明確に示されたことを踏まえて、その進捗確認という位置づけの文書になります。上記のIFRS対応方針協議会を構成する各団体において、現時点での取組みがまとめられています。

そのなかでも今回は、以下の2点をトピックとして取り上げたいと思います。
1.決算短信における会計基準選択の考え方の記載
2.修正国際基準の公開草案

1.決算短信における会計基準選択の考え方の記載について

少し話が変わるのですが、4~5年前からIFRS適用については、単なる会計業界(!?)だけの論点ではなくて、政治マタ―のような取扱いとなってきています。端的な例で言えば、平成25年6月において自民党内の小委員会が、「2016年末までに300社程度」という具体的な目標を公表しています。
そのような背景もあり、平成26年6月に閣議決定された『「日本再興戦略」改訂2014』においては、「IFRSの任意適用企業に拡大促進」という項目が設けられ、『2008年のG20首脳宣言において示された、会計における「単一で高品質な国際基準を策定する」との目標の実現に向け、IFRSの任意適用企業の拡大促進に努めるものとする。』との記載が為されています。
さらに、「上場企業に対し、会計基準の選択に関する基本的な考え方(例えば、IFRSの適用を検討しているかなど)について、投資家に説明するよう東京証券取引所から促すこととする。」という具体的な記載も盛り込まれています。

それを受けて、東証は「決算短信・四半期決算短信 作成要領等」の改正版において、「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の項目を新設しています。そこでは、IFRSの適用を検討しているか(その検討状況、適用予定時期)などを記載することとされています。
当該作成要領の適用開始は平成27年3月31日以後終了する通期決算に係る決算短信からとされていますので、平成27年3月決算会社の当該開示がどのようなものになるのか、注目されるところです。

東証HPによると、平成27年2月現在で、
任意適用会社数  :38社
任意適用予定会社数:29社
合計       :67社
であり、300社にはまだまだ遠い感じではあります。(但し、会社数は少ないですが、時価総額基準でいうと、全上場会社の10~20%くらいの割合は占めるようです。)

しかし、そのような開示を通じて、IFRSへの任意適用への意識を高める効果は相応にあるように思います。特に、実際に任意適用を決定していないとしても、相応の準備をしている会社にとっては、任意適用を決定する1つのきっかけになるのではないでしょうか。

2.修正国際基準の公開草案について

2014年7月にASBJ(企業会計基準委員会)が「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」の公開草案を公表しています。
英文名称は「Japan’s Modified International Standards」であり、略称はJMISとなります。複数の呼び方がある(!?)IFRSと違い、「ジェイミス」と呼ばれるのが一般的のようです。

JMISは、「IFRSの任意適用の積み上げ」の観点で言えば、ピュアなIFRSだと任意適用しづらいと考える会社に対して、多少馴染みやすい修正IFRSを提示することにより、IFRS適用へのハードルを下げる目的である基準であるとの理解で良いと思います。厳密な意味では、ピュアなIFRSとは異なるので(当たり前ですが・・)、それをもってIFRS任意適用という形で世界的に発信できるかは微妙だと思われる方もおられるかと思いますが、あくまで過渡期の基準であるとの位置づけです。実際の運用方法についても、これから検討・決定していく段階です。

ピュアIFRSとJMISの相違点は、具体的には以下の2点になります。
・のれんは、IFRSでは非償却であるが、JMISでは従来の日本基準同様に定額償却(20年以内)する。
・その他包括利益のリサイクリングについて、IFRSでは各基準毎にリサイクリングする場合としない場合が混在するが、JMISでは一律リサイクリングする。
逆に言えば、上記2項目以外については、IFRSが適用されます。

上記2項目の相違点については、第33回「アジェンダ協議に対する日本の意見」をご参照下さい。
第33回のコラムでも触れましたが、IFRSと日本基準の相違点については、コンバージェンスが相応に進んでいる現状でも、大きく以下の6項目についてはIASBに対して再検討を要望している状況です。
・その他包括利益のリサイクリング
・公正価値の適用範囲
・開発費の資産計上
・のれんの非償却
・固定資産の減損の戻入れ
・機能通貨

従って、今回のJMISの作成にあたっては、少なくとも上記6項目についてはIFRSから離脱することを検討されていると思われます。一方で、あまりIFRSとの相違点を多くすることは望ましくないとの考え方があり、その結果として、上記のリサイクリングとのれん非償却の2項目が選択されたものと推察されます。
会計理論的な相違点というよりは、のれんは金額的なインパクトが大きく(実際にIFRS任意適用会社の事例をみても、影響額の大半はのれんに関するもの)、リサイクリングはPL上の当期純利益にダイレクトに影響を与えるため、その重要性を勘案した結果、当該2項目が選択されたのだと思われます。

いずれにしても、多少の加速感は出てきましたが、全ての上場会社に対してIFRSに対する機運を高めていくことは、もう少し先になりそうです。そもそも、当コラムの発端となった米国のIFRS適用の議論もあまり進んでいませんし・・・

ということで、今回はこの辺で。。。

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