第24回 棚卸資産

みなさん、明けましておめでとうございます。
そろそろ正月ボケから脱却しつつある寺田です。(かなり遅いかもしれませんが・・・)
本年も、このコラムを粛々と続けてまいりますので、引き続きご愛読よろしくお願いします。
少しでも、皆様のお役に立てるような情報提供が出来るよう、努めていく所存でございます。

さて、本年の第1回目ですが、「棚卸資産」を取り上げたいと思います。
今回のテーマを決めるにあたって、IFRSの基準書を見たところIAS第2号「棚卸資産」を今まで取り上げていない事に気付きました。
ちなみに、IAS第1号は「財務諸表の表示」です。IAS第1号も非常に重要なテーマなのですが、現時点で大幅なIFRS改訂作業中であり(今年中に 改訂作業は完了する予定となっています)、新基準が最終確定し次第、このコラムで取り上げていきたいと考えています。

IASの番号順を見ると、「棚卸資産」は「表示」に続く2番目なので、形式的(!?)には非常に重要な位置づけかな、と勝手に考えています。 とは言え、基準の内容自体は非常にボリュームが少ないです。規定の本項目で42項目となっています。

IAS第2号のボリュームが少ないこともあり(!?)、日本基準との差異はさほど大きなものはないと思われます。
具体的には、今回は以下の4点について取り上げたいと思います。
1. 固定製造間接費の配賦計算
2. 最終仕入原価法
3. 売価還元法
4. 低価法適用における再調達原価の取扱い

1. 固定製造間接費の配賦計算について

まず、製造直接費及び変動製造間接費は、実際の使用量に基づいて原価計算されることになります(通常の原価差額の配賦計算が行われます)。 この点については、日本の現状実務と比べて、特に論点となる点はなさそうです。

しかし、固定製造間接費の配賦計算の考え方が、日本の会計実務と異なっています。IAS第2号における固定製造間接費の配賦計算は、「生産設 備の正常生産能力に基づいて行われる」という規定です。正常生産能力の定義は、「正常な状況で期間又は期間を通して平均的に達成されると期待さ れる生産量」とされています。さらに、「実際の生産水準が正常生産能力に近い場合には実際生産水準を使うことも出来る」という規定になっていま す。

ここでポイントとなってくるのは、固定製造間接費の配賦計算で使用される指標は、実際生産水準ではなく「正常生産能力」である、という点で す。取得原価主義の観点から見ると、感覚的には、実際生産水準で配賦するのが妥当のような気がしますが、IAS第2号では正常生産能力に基づく配 賦計算を原則としています。

その際に発生する原価差額については、以下の2つの規定が設けられています。
生産水準が低下した場合 :配賦額は増加させない(増加相当額は費用処理)
生産水準が異常に高い場合 :配賦額を減少させB/S計上額が原価を上回らないようにする

つまり、実際の生産水準がどうであれ、「正常生産能力」に基づく配賦計算によるB/S計上額が、棚卸資産の公正価値評価につながるという観点 で、IAS第2号は規定しているようです。これは、原価差額をどのように売上と売上原価に按分するか(いわばP/L重視)という考え方とは、若干異な る考え方かもしれません。IAS第2号の考え方のもとでは、多少の生産水準の変化は、棚卸資産のB/S計上金額の変動要因とはなり得ない、ということ が出来そうです。
その上で、「生産水準が異常に高い場合」に限って、「正常生産能力」に基づくB/S計上額が、「実際の生産水準」に基づく製造原価に比べて著 しく高くなってしまう(言い換えると、在庫評価の過大計上となる)ため、例外的な規定を設けているものと解釈出来ると思います。恐らく、俗にい うB/S重視という IFRSの特徴が現れてきている箇所と言って良いでしょう。

実務上は、「正常生産能力」と「生産水準が異常に高い場合」という2つの会計的なトピックを、どのように各会社で判断するかが論点となりそ うです。ですが、その2つの考え方は、会社の生産方針や原価管理方針などを軸に整理していけば、自然に各社の採用すべき会計上の判断が決まって いくような気がしています。

2. 最終仕入原価法
IAS第2号では、原価算定方式として、個別法、先入先出法、加重平均法の3つが限定列挙されています。その代わり、中小企業版IFRS(第17回 のコラムご参照下さい)においては、簡便的な方法として最終仕入原価法が認められています。
日本基準では「棚卸資産の評価に関する会計基準」において、「期末棚卸資産の大部分が最終の仕入価格で取得されている場合や、期末棚卸資産 に重要性が乏しい場合においてのみ容認される方法と考えられる。」旨の規定があります。
IFRS適用下での最終仕入原価法は、厳密に言えば原則として認められない、ということになります。但し、現状の日本基準における容認規定は、 その趣旨が IFRSの原則と大きく異ならない(IFRSフレームワークにおいても、重要性の考え方は提示されています)とも考えることが出来るように 思います。従って、無条件に最終仕入原価法をIFRS適用下においても継続適用するという訳にはいかないかもしれませんが、あくまで私見ですが、適 切な検討過程や判断に基づいた簡便的な会計処理方法の採用自体は認められるのではないか、と考えています。

3. 売価還元法
誤解されている方がいらっしゃるようなのですが、IFRSにおいても売価還元法は認められています。但し、「その適用結果が原価と近似する場合 にのみ、簡便法として使用が認められる。」という規定です。ここでいう「原価と近似する場合」の考え方が、実務上の論点となるかもしれませんが 、IAS第2号では、「売価還元法は、小売業において、他の原価算定方法の使用が実務上不可能なものを測定するために使用されることが多い。」旨 の記載もあるため、小売業(もしくは類する業種)については、さほどナーバスになる必要はない論点かもしれません。

4. 低価法適用における再調達原価の取扱い
日本基準では、原材料等の低価法の適用にあたっては、原則は正味売却価額による評価とした上で「再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価 額が当該再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には、継続して適用することを条件として、再調達原価によることができる。」とされて います。
それに対して、IAS第2号では、「原材料等は、原材料等が組み込まれている製品が原価以上の金額で販売されると見込まれる場合には、原価よ り低くは評価減されない。しかし、原材料等の価格の下落が、製品の正味実現可能価額が原価より低くなることを示しているときには、その原材料等 は正味実現可能価額まで評価減される。このような場合、原材料の再調達原価が、正味実現可能価額について最良の入手可能な測定値であることもあ る。」という規定になっています。 つまり、IAS第2号では、原材料の最終的な成果物である製品価値が下落した場合の原材料の評価として再調達原 価が容認されているのに対し、日本基準では、最終的な製品価値の下落の有無に関わらず再調達原価に基づく低価法が容認されていることになります 。
従って、日本基準の容認規定を適用している会社は、IFRS適用下においては原則として認められなくなることに留意が必要です。

IAS第2号に関しては、以上のような感じでしょうか?
棚卸資産については、最近の日本基準の改訂によって、低価法の適用や後入先出法の廃止などの重要な論点については、既にコンバージョン済み なので、大きな差異や影響はあまりないかもしれません。
とは言え、量的にも質的にも重要な勘定科目であることには変わりないので、IFRS適用を機に自社の生産方針、原価管理方針、在庫管理方針など を整理・確認することが重要になってくると思われます。

あと、棚卸資産に若干関係する個別論点として、「借入費用」に関する論点があります。
これは、次回のこのコラムで取り上げたいと思います。

という訳で、今回はこの辺で。。。

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