第16回 IFRSの初年度適用

みなさん、こんにちは。

最近、まだ花見をしていない事に気付いた寺田です。
まあ、去年もしてないんですけど・・
(一昨年はしていたりします。)

これまでのこのコラムで、個別論点はある程度一巡したかなという気がするので、今回は、IFRSの初年度適用について取り上げたいと思います。

これまで取り上げた個別論点については、場合によっては実際には関係のない会社もあるかも知れませんが、このトピックは全会社に関係のあるトピックなので、その意味では非常に重要だと思います。
IFRSの初年度適用に関しては、IFRS1号「First-time Adoption of International financial Reporting Standards」に規定されています。

改めて考えると、初年度適用に関する規定が1号として規定されているのは、IFRSを何となく象徴していると思うのは僕だけでしょうか・・・(「初年度適用」を独立した規定項目として規定していることも含めて)
以下にIFRS1号に記載されている規定を、僕なりにまとめてみました。

【前提】
まず、IFRSの「初度報告日」と「移行日」が違うことに留意して下さい。
例えば、2015/3期末日がIFRSの「初度報告日」の場合は、2013/4期初日(2013/3期末日)がIFRSの「移行日」となります。
つまり、上記の例だと、IFRSの「初度報告日」において開示が求められている貸借対照表は、2015/3期末、2014/3期末、2013/3期末の3期分となり、そのうち一番古い2013/3期末からIFRSの適用が求められているのがポイントです。

【移行日において必要な要件】
≪原則≫
・初度報告日現在で有効なIFRSを適用(上記の例だと、2015/3期末時点)
・IFRSで要求される全ての資産・負債を認識
・その際の測定方法にIFRSを適用
・IFRSが認識を認めない資産・負債は除外
・表示科目のIFRSベースへ組替

結局は、原則として、全ての会計処理及び表示に関してIFRSを適用する、という当たり前の事が規定されています。
但し、この場合の適用は、移行日からIFRSを適用するというニュアンスではなく、移行日時点の貸借対照表を構成する各項目について、その発生年度まで遡及してIFRSを適用するというニュアンスなので、ちょっと(というより、かなり)面倒な感じになります。
それでは、あまりにもIFRS移行実務が煩雑なので(!?)、遡及適用の困難・煩雑性の観点から、例外規定が4項目、免除規定が15項目、規定されています。例外規定が強制適用、免除規定が任意適用というイメージです。

≪例外規定(4項目)≫

① 会計上の見積り
明らかに誤りであった場合を除き、(例えば、修正後発事象のような)遡及修正はしなくても良いことになっています。
特に引当金については、移行日時点での計上額について、初度報告日までの2年の間で結果的に(事後的に)金額の過不足が判明することが多々あると思いますが、これを修正することは基本的にやらなくても良いという取扱いになっています。

② 金融資産負債の認識の中止
移行日以前の取引については遡及検討の必要はなく、移行日から将来に向けて対応すれば良いことになっています。但し、過去の金融資産負債の認識の中止に関する資料が入手できる場合は、遡及適用は任意となります。

③ ヘッジ会計
移行前のヘッジ会計は全てクリアした上で、移行日時点でのIFRSベースのヘッジ会計適用をいちから検討することになります。

④ 非支配持分
IFRS3号「企業結合」は遡及適用が困難なため、IAS27号「連結財務諸表及び個別財務諸表」の一部のみ遡及適用すれば良いことになっています。

遡及適用が必要な項目は、少数株主持分がマイナスの場合の会計処理、親会社持分が変動した場合の会計処理、子会社の連結除外時の会計処理です。

≪免除規程(15項目)≫

① 企業結合
移行日前の企業結合に関する会計処理は、移行前に適用していた会計基準(日本基準)で良いことになっています。
但し、その場合であっても、移行日の貸借対照表において、IFRSに基づく資産・負債の修正は必要となります。

② 株式報酬取引
移行日以降に権利確定したものに、IFRSを適用すれば良いことになっています。

③ 保険契約
保険会社特有の規定なので、説明は省略します。

④ みなし原価
資産の取得原価の算定については、取得時までIFRSを遡及適用せず、移行日時点の公正価値で良いことになっています。
とは言え、私見ですが、有形固定資産については取得時までIFRSを遡及適用する方が楽かも知れません。(移行日時点の公正価値の考え方によりますが・・・)

⑤ リース
リース取引に係る会計的な判断について、契約時まで遡らず、移行日時点での情報で実施すれば良いことになっています。

⑥ 従業員給付
(日本基準で言うところの)数理計算上の差異に係る回廊アプローチについての規定ですが、IFRS自体が関連規定を撤廃する方向なので、説明は省略します。

⑦ 累積換算差額
為替調整勘定を移行日時点でゼロにできます。その場合は、相当額は剰余金に振り替えられることになります。
個人的には、この規定がIFRS1号のなかで一番着目している箇所です。(今後は、各国の適用事例も検討しようかな、と思っています。)

⑧ 子会社、共同支配会社、関連会社への投資
親会社の個別貸借対照表上では、移行日のみなし原価でも良いことになっています。
日本では、まだ個別貸借対照表の強制適用が検討中である状況なので、ここは特に関係なくなる規定かも知れません。

⑨ 子会社、関連会社、JV(ジョイント・ベンチャー)の資産及び負債
連結子会社等のIFRS導入が遅れている場合は、IFRS1号を準用して各子会社等の財務諸表(連結決算の基礎となる)を作成すれば良いことになっています。
ある意味、当たり前の規定ですね。。。

⑩ 複合金融商品
移行日現在で負債相当額がゼロとなっている複合金融商品は、遡及して区分処理する必要はないことになっています。

⑪ すでに認識されている金融商品の指定
金融商品の会計処理区分について、「売却可能」か「その他」かの指定を、遡及せずに移行日時点で行えば良いことになっています。
金融商品に関しては、IFRS改訂により、新しい会計基準が適用されることになっていますが、基本的に金融商品の区分を指定することには変わりないので、同様の免除規定が適用されることになると思われます。

⑫ 当初認識時における金融資産又は金融負債の公正価値測定
非常に限定的な内容なので、ここでは説明を省略します。

⑬ 有形固定資産の原価に算入されている廃棄負債
資産除去債務について、移行日時点の債務を算定すれば良いことになっています。
日本基準でも既に適用されているところ(といっても、まさに適用されたばかりですが・・)なので、特に影響はない規定かも知れません。

⑭ サービス委譲契約
公共部門からサービスを受ける場合の規定です。非常に限定的な内容なので、ここでは説明を省略します。

⑮ 借入費用
適格資産に係る借入費用の取得原価参入については、移行日からのものについて対応すれば良いことになっています。
このような、例外規定・免除規定が今のところ規定されていますが、今後のIFRSの大幅な改訂をうけて、IFRS1号も相応に改訂される可能性があります。ですので、実際に初度適用する段階においては、改めて直近のIFRS1号の内容を理解しておく必要があると思われます。

いずれにしても、開示財務諸表上において、初度適用の状況(適用した免除規定の説明等)を詳細に注記することになります。
こんな感じで、IFRSの初年度適用について大体のイメージはつかんで頂けたでしょうか?
「結構免除規定多いじゃん」とか「結局面倒くさいことには変わりないなあ」とか、人によって受ける印象は様々だと思います。僕はどちらかというと後者ですかねえ。。。

ということで、また次回・・・

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