第12回 無形資産

みなさん、こんにちは。
まだ年末年始の予定が決まっていない寺田です。
といっても、例年その時期は家でTV・DVD・ゲーム三昧だったりするんですけど。。
どこ行っても混んでそうだし、外は寒いので・・
そんなことより、今回は、無形資産について触れたいと思います。

国際会計基準上では、IAS38号「無形資産」(Intangible Assets)で関連事項が規定されています。それに対して日本基準では、基本は「貸借対照表原則」に規定されており、重要トピックとして「研究開発費等に係る会計基準」や「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」が規定されているという状況です。日本においては、無形資産の考え方について包括的かつ理論的に規定された基準はありませんが、実質的には日本基準と国際会計基準との間に大きな差異はさほどないと思われます。
しかし、主要な相違点として、以下の3つが挙げられます。

(1)研究開発費の資産計上
(2)再評価モデルの適用
(3)償却年数の取扱い

主要な相違点の前に、IAS38号における無形資産の定義をご説明しておきます。

【IAS38号の考え方】
IAS38号では、無形資産は、「過去の事象の結果として企業が支配し、かつ、将来の経済的便益が企業に流入することが期待される資源」(IFRS概念フレームワーク上の資産の定義です)のうち、「物質的実体のない識別可能な非貨幣性資産」と定義されます。
つまり、無形資産の要件としては以下の3つであると考えられます。

①支配の存在
ここでいう支配とは、将来の経済的便益を獲得する力を有し、他者による便益の利用を制限する能力のことです。また、企業は法的権利以外でもさまざまな方法で将来の経済的便益を獲得する可能性があるため、権利の法的強制力は支配のための必要条件ではない、とされています。

②識別可能性
以下のいずれかの場合に該当すれば、識別可能であると考えられます。
・分離可能であること
・契約その他の法的な権利に起因するものであること

③経済的便益の流入
無形資産の特性から、上記でいえば①及び②がポイントになってくると思われます。日本だと、貸借対照表規則に列挙されている項目について限定的に計上しがちですが、上記の要件に当てはまるものはより積極的に無形資産として計上することが必要になるかも知れません(但し、内部創出のれんは別です)。同様に、これまでは慣習的に無形固定資産として計上してきたものが、上記要件に照らした結果、資産性がないということもあるかも知れません。
その際には、③についても留意が必要です。現状の日本の会計実務上では、ソフトウェア勘定の資産性については、同様の議論がなされているので違和感はないと思われますが、そのような議論がより広範にわたってなされることになると思われます。(なお、③については、将来のコスト削減効果も含まれます。)

上記の定義を踏まえて、以下の2要件を満たすものが、無形資産として計上されます。

・資産に起因する、期待される将来の経済的便益が流入する可能性が高い。
・当該資産の取得原価が信頼性をもって測定できる。

ここでのポイントは、「~流入する可能性が高い」の「高い」の考え方でしょう。会計監査の実務上ではありがちな(というと怒られそうですが・・)場面として、この辺の考え方については、会社と監査人との間で見解相違することが割とありそうな気もします。

【日本基準とIAS38号との主な相違点】
冒頭で述べた3つの相違点について触れたいと思います。

(1)研究開発費の資産計上について
日本基準では、研修開発費は発生時に原則として費用処理されます(その例外規定としてソフトウェア等が挙げられます)。
しかし、IAS38号では、一部の研究開発費は資産計上されることになります。具体的には、研究開発活動を研究活動と開発活動に区分した上で、開発活動での支出のうち、以下の6要件を満たしたものは資産計上しなければなりません。

・無形資産を完成させることが技術的に実行可能であること
・企業が無形資産を完成させ、使用・売却する意図を有していること
・企業が無形資産を使用・売却する能力を有していること
・無形資産から経済的便益を引き出す手法(市場や使用形態等)が特定されていること
・無形資産を完成させ、使用・売却するために必要な資源を利用できること
・開発期間中の無形資産に起因する支出を信頼性をもって測定できること

キーワードは下線を引いてみました。確かに、資産性の要件としては十分だと思いますが、それを立証するのは結構困難かつ煩雑な場合が多いような気もします。

これに関連して、ちょっと興味深いデータがあります。ASBJ(企業会計基準委員会)が公表している「社内発生開発費のIFRSのもとにおける開示の実態調査」という文書があるのですが、欧州企業が過去において、どのような感じで研究開発費を資産計上しているのかを調査した結果が出ています。それによると、資産計上をしている企業としていない企業は結構まちまちな状況のようです。一概には言えませんが、資産性の証明が困難かつ煩雑なケースが多いため、頑張って(!?)資産計上している企業と、資産性の証明がしきれないと判断している企業が混在している状況なのでしょう。将来の日本においても、似たような状況が生じるのではないかと思います。

(2)再評価モデルの適用について
これは、有形固定資産と同様ですので、内容については第4回のコラムをご参照下さい。
無形資産については、その公正価値が活発な市場を参照することにより決定可能な場合にのみ、再評価モデルの適用が認められます。
また、以下の項目については認められていません。

・従来、資産として認識されていなかった無形資産の再評価
・取得原価以外の金額による、無形資産の当初認識

(3)償却年数の取扱いについて
無形資産の償却計算については、基本的に残存価額をゼロとし、見積耐用年数に基づいて規則的な償却計算を行っていくという点では、日本基準とIAS38号との間で相違はありません。但し、
以下の点では考え方が違っています。

①償却に関する見直しについて
IAS38号:耐用年数が確定可能な無形資産の残存価額、耐用年数及び償却方法は、少なくとも、各会計年度末において見直されなければならない。

日本:多くの企業が法人税法に定められた耐用年数、残存価額を用いているため、それらの見直しは定期的には実施されない場合がある。

ここについては、有形固定資産と同様に、日本の会計実務では法人税法基準に併せる形で(場合によっては、経済的実態と異なっていたとしても)償却計算をしている現状につきるでしょう。

②耐用年数を確定できない無形資産について
日本では、地上権や借地権などの一部の無形資産を除いて、(法人税法に基づく)所定の耐用年数で償却計算を実施していますが、IFRSではより積極的に経済的実態を反映した耐用年数を見積もった上で、当該年数に応じた償却計算を求めています。その際には、原則として20年を超えることは出来ないとされています(合理的な証拠が提示出来る場合を除く)。

また、無形資産の場合は、その特性から見積耐用年数が確定できない場合が生じます。その場合には、見積耐用年数が確定するまでは償却計算は実施せずに、その代わりに毎期末において、当該資産の帳簿価額と回収可能価額とを比較(IAS36号に基づく減損テスト)しなければなりません。

この点については、IFRSのB/S重視の考え方は強く反映されている箇所だと思います。日本基準(P/L重視)の発想だと、無形資産のような資産性の把握がしづらい勘定は、期間損益が著しくブレない程度の相応に短い年数で規則的な償却計算し、早々にオフバランスさせることに重きを置く傾向があります。それに対して、IFRSだと期末資産の公正価値を重視するので、永久に資産価値を持つ無形資産なのであれば、永久に相当額が計上され続けることが理論的な考え方になります。

と、無形固定資産に関するポイントはこんな感じでしょうか??

なお、のれんについては、上記というよりは企業結合会計や連結会計マターの要素が強く、結構流動的な状況なので、また機会があれば触れていこうかなと考えています。

ということで、今回はこの辺で。。。

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