第5回 資産の減損

みなさん、こんにちは。
今回は、前回の予告どおり(!?)、資産の減損について触れたいと思います。
個人的には、日本基準と国際会計基準の差異が、一番端的に表れている箇所だと思っています。
国際会計基準では、IAS第36号「Impairment of Assets」において、資産の減損会計についての規定が定められています。日本と同様に、棚卸資産や金融商品などの減損会計(及びそれに相当する評価規定)は別の基準で定められているので、IAS36号は基本的に固定資産の減損会計について定められたものと考えられています。
日本においては、既に「固定資産の減損に係る会計基準」が2005年4月以降開始事業年度から適用されています。当該会計基準は、IAS36号の規定内容にも十分な配慮が行われたため、細部で若干の差異はあるものの、以下の点を除いて基本的な大きな差異はないとされています。といっても、基準文言上の形式的な差異としては大きな差異はないものと思われますが、その根底にある考え方の相違は大きいものと個人的には考えています。
【日本基準との違い】
(1)減損の兆候
日本基準:実務指針ベースでの具体的な数値基準(例えば、市場価額の50%超下落)
IAS36号:より広範囲に及ぶ兆候を総合的に判断
IAS36号では、最低限度の調査事項として、以下を減損の兆候として例示列挙しています。
・資産の市場価値の低下による公正価値の減少
・技術環境や製品市場等での不利な変化による将来CFの減少
・市場利子率や投資収益率の上昇による割引利子率の上昇
・発行済株式の時価総額が純資産の帳簿価額を割り込んで低下
・物理的な損耗または機能的な陳腐化の証拠の存在
・事業の撤退やリストラ、または早期の資産処分の計画の存在
・資産からのCFや損益の予算値ないし実績値などの悪化
特に3番目と4番目については、従来の日本基準の考え方にはなかなか馴染まない感じです。ただ、資産の公正価値評価の観点から言えば、減損兆候に該当するのもある意味当然とも言えます。
(2)減損の認識の判定に用いる数値
日本基準:割引前CF
IAS36号:割引後CF
上記(1)及び(2)については、IAS36号の方が日本基準よりも相対的に早めに減損損失を認識する傾向にあると言えます。
(3)減損の戻し入れ
日本基準:なし
IAS36号:減損後に資産価値が回復すれば、過年度損失の戻し入れができる。(のれんは駄目)
日本基準は、減損損失の認識をより慎重に行う分、戻入れは認めていないと考えられます。
結局のところ、日本基準は、なるべく毎期のPLのブレを少なくするような規定であるのに対し、IAS36号は、極力BSの計上額を期末時の公正評価額にしようとするような規定であるというところに、基本的な考え方の差異があると思います。
これは、前回に触れた減価償却費の考え方の相違についても同様であると思います。
どっちか良いのかはなかなか難しいところではありますが、いずれにしても、IAS36号の考え方が今後の主流になっていく可能性が高いことだけは間違いないのでしょうね。
という訳で、今回はこんな感じで。。。

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