2012.06.18

マクラーの独り言 〜 あるいは次世代の教育に関する一考察

「マクロ」なるものをご存知でしょうか?

エクセルなどのアプリケーションソフトで、操作手順を記述し再現することができる機能のことをいいます。実際には操作手順だけでなく、分岐やループも記述できるため、かなり高度な処理もできます。「マクロウィルス」という言葉を聞いたことのある方も多いと思います。

マクロ好きのことをマクラーといいます。

私とマクロとの出会いは約20年前に遡ります。当時入社したてのプログラマーだった私は、先輩からエディター(プログラムを書くためのワープロのようなもの)のマクロを紹介され、たちまちその虜となりました。仕事を終えると当時まだ重くて高価だったラップトップPCを寮に持ち帰り、マニュアル本とにらめっこでマクロを勉強し、その威力に感嘆する毎日でした。

そんなある日、別の先輩が「オセロゲームを作って俺に勝ったら一万円やる」というのを聞いて、覚えたてのマクロでこの挑戦を受けることにしました。当時はまだ馬力も集中力もあったので、徹夜でプログラムの骨組みを完成させ、1週間くらいかけてオセロのアルゴリズムを調整し、先輩に挑戦しました。
結果は負けでした。
コンピューターの思考過程を盤上に表示させたままにしたため、アルゴリズムを見破られてしまったのが敗因です。とはいってもオセロゲームにおいて、相手の戦略を知ってその裏をかくということはなかなかできることではありません。先輩はいうだけあってオセロに自信があったようです。同期の何人かとも対戦させましたが、結構勝ちました。
負けはしましたが、エディターのマクロでオセロゲームを作ったということで私の存在は社内で相当認知されましたし、私自身プログラマーとしての大きな自信になりました。ちなみにオセロ先輩は、最年少でこの一部上場企業の執行役員になりました。

オセロゲームのような複雑なマクロを作ったのは後にも先にもこの一度きりですが、その後もマクロを作り続けました。
監査法人に入って使い始めたエクセルにもマクロがあることを知り、早速習得し、アサインメントを見やすくするマクロを作成して同期に配ったところ、瞬く間に300人の部門全体に広がったこともあります。
監査現場でもクライアントの担当者が半日かけていた仕事を一瞬で終わらせるマクロを作ってあげたことがあります。最近では会計士や経理担当者の前で実務向けのエクセル研修をしたのですが、「マジックみたい」という感想をいただきました。私にとって最大限の賛辞です。

「マクロは便利そうだけど自分には関係ないよ」
多くの方がそう思うことでしょう。しかしそうではありません。マネジメントの立場で、たとえ自分でマクロを書けなくても、マクロを使えば簡単にできるはずということを理解しているだけで組織に潜む膨大な無駄を減らすことができるかもしれません。マクラーの視点から見ると組織には本当に無駄が多いのです。

唐突ですが、皆さんは1から100までの数を足すのにどのくらい時間がかかりますか?
少年ガウスは一瞬でこの問題を解いて教師を感嘆させました。解説するまでもありませんが、ガウスは1から100までの数列に100から1までの数列を足すと101が100個並ぶことに気づいたのです。ガウスは後に素数の規則性を発見するなどした数学界の巨匠です。
実直に足し算を頑張る人生も否定しませんが(例えば一生をかけて円周率を35桁計算して墓石に刻んだルドルフの人生には憧れます)、リーダーたるもの混沌の中に秩序を見出し将来の展望を示す、といった掛け算的な努力のほうが求められるのではないかと思います。
最近のトピックと関連させるならば、古代における日食を預言する者の権威とリスクについて考えると分かりやすいかもしれません。

先日、外資銀行の経理で長くキャリアを積まれた公認会計士とお話する機会がありました。この方によれば、外資のマネジメント層が出世するには、どの部門であれシステムの知識が必須であるとのことでした。これはPCやエクセルのようなアプリケーションの操作に習熟しているという意味ではなく、システムを効果的に使えば組織としてどのような結果が得られるか、ということを見通し実現させる力を持っているということです。
「ITリテラシーが所得格差を生む」と言われて久しいですが、日本の監査や管理部門を取り巻く環境をみる限り、この言葉が緊張感をもって受け止められているとはいえないようです。

先の会計士は続けます。「IT化が進んでいる外資では、インド人の雇用が進んでいる。いずれ日本企業もそうなり、日本人は職場を失う」と。
日本ではいっそのことIT化など進めずに今のまま紙と手作業に徹して、日本語ができなければ業務ができないようにガラパゴス化し、ハングリーに勉強してグローバルで通用するITと英語を身につけた外国人に対する参入障壁を高くして、次世代の日本人雇用を維持するのも手かな、とも思いますがいかがでしょうか?

少々辛口なマクラーの独り言でした。

<信条>

混沌の中に秩序を見出すことこそ真の仕事である。

 

<モットー>

職業会計人としての気概を持ち

成長を志す経営者を支援し 

地域に貢献する    

 

<最後に一言>

昨日の自分を超えましょう!

 

一木 伸夫

<座右の銘>

「和而不同」(和して同ぜず)

「銀も 黄金も玉も何せむに まされる宝 子にしかめやも」(山上憶良)

<経歴>

早稲田大学商学部卒業後、プログラマを4年経験。税理士事務所見学を機に公認会計士を目指す。中央青山監査法人に入所し、様々な業種の監査を経験。20077月に監査法人A&Aパートナーズに移籍。20123月に独立し、一木会計事務所設立。

<趣味>

オープン・ウォーター・スイミング

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