2008.07.14

鳥モトマラズ

 昔、田舎に帰ると玄関先に細切れにされた謎の木の枝がたくさん干してありました。3本の鋭いとげがところどころ生えている初めて見る木の枝。これが何かと尋ねると「鳥モトマラズ」と祖父が教えてくれました。とげのせいで鳥もとまらないから、そのまま「鳥モトマラズ」だそうです。

 なんでもこの木の樹皮を煎じて飲めば糖尿病に効くとかで、当時糖尿病だった祖母のため山から採ってきていると。それ本当?と私が聞けば、祖母はこれを飲みだしてから病院で「血糖値が下がっていますね」と褒められたそうです。甘いものが好きで、けれど糖尿病だから食べられない祖母。このおかげで少しならケーキが食べられるととても喜んでいました。

 祖父は同級生に友達の友達の……という知り合いとはいえない中年夫婦が、この枝を探しているから採ってきてくれないかと頼まれ山に入ったそうです。そこでたくさんの枝を取り、家まで訪ねてきた中年夫婦にそれを渡すと大層感謝されたそうです。お礼を断ったらお米やお酒を送ってくれたというから相当でしょう。山で取った枝を煮詰めてその汁を飲むのですが、それがまた不味そうで不味そうで。見た目は水たまりの色というひどさ。それでも効果は覿面で祖母は祖父が亡くなるまで飲み続けていました。

 祖父が亡くなった今はもうない「鳥モトマラズ」それが何だったのか今となってはわかりません。文明の利器インターネットで調べたところどうやら「タラの木」では……といくつか写真を見たのですが、これだ!という確信には至っていません。

 たぶん「タラの木」であろう「鳥モトマラズ」

 でも「山には『鳥モトマラズ』という不思議な木があって、煎じて飲めば病気を治してくれるんだよ」そんな風に思う方が楽しいので、私の中であの木の枝はいつまでたっても不思議な「鳥モトマラズ」です。

福沢 育子(ふくざわ いくこ)

青森県出身(といっても本籍のみで生まれてからはずっと東京)

ソフトウェア開発業を経てAAPへ。社内PCのイロイロやIT監査のお手伝いをしています。

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