2007.10.22

動物たちの競技会

昔、古代ギリシャの時代に、アフリカのサバンナで、動物たちの競技会が、1回だけ開催されたことがありました。発起人は象でしたが、そもそもは、共通の水飲み場での、動物たちによる、誰が一番優れた動物か、という論争に端を発しました。 

力では、誰にも負けないと言う象。自分は、どの動物からも攻撃されない、と豪語する百獣の王ライオン。走る早さなら誰にも負けない、と自慢するチータ。誰よりも高いところを飛べると言うハゲ鷲等々。結局のところ、話し合いでは決着がつかなかったので、一堂に会して勝負をしよう、ということのなったのです。 

翌日の朝、約束の場所に動物達が揃いました。まず、戦いのルールを決めることから始められました。大前提として、競技中は闘う相手を襲わない、食べない、ということは了解されました。しかし、競技方法については、それぞれが自分に都合の良いルールを主張しました。走力に関しては、短距離を主張するチータ、長距離を主張するシマウマ。レスリングでは、地上での勝負を主張する象、水中を主張するワニ等々。ハイエナだけが謙虚に、審判を引き受けようと言います。内心は、謙虚どころか、審判の立場を利用して、何か余禄にありつこうとの魂胆です。 

競技会どころか、ルールそのものが決まりません。象が言い出しました。「とりあえず、簡単にできるものからやろうじゃないか。」そこで、勝負の勝ち負けによって誰も負傷する心配のない、ジャンプ力を競うことから始めることになりました。走り巾跳びです。サバンナを流れる小川を飛び越えることで競いました。 

まず、ライオンが得意になって飛び越えます。次に飛んだイボイノシシは、無残にも川におちてしまいました。チータは、ライオンの記録を簡単に越えます。それを見て、審判のハイエナが、踏み切り地点を後ろにさげ、川に落ちる恐怖を強めました。インパラが、華麗なフォームで、楽々と飛び越えました。どっと拍手がわきおこりました。次に、チンパンジーが長い棒を持って、棒高跳びの要領で、さらに記録を更新しました。皆は、道具を使うのはインチキだ、と文句をつけますが、チンパンジーから賄賂を受け取っているハイエナは、それを認めてしまいます。そこへ、キリンが登場し、軽く跨ぐかのように飛び越え、いとも簡単に勝利を奪っていきました。キリン以外の参加者は、体力差がこんなにあっては、フェアーではないと不満たらたらです。 

次に行われたのが水泳でした。池を使って行われました。対岸に早く泳ぎついたものが勝ちです。ワニ、カバ、ヘビ等が参加しました。ヒヒが賭けの胴元になりました。皆、ワニが圧倒的有利とみて、ワニに賭けました。潜水泳法を禁じていなかったことに問題がありました。なんと、カバが勝ってしまいました。ヒヒに知恵をつけられ、対岸の岸近くに、姿、形のそっくりな仲間のカバが潜って待機していたのです。ワニがゴールする直前に、水面に浮かび出て、岸にタッチしました。スタート早々からカバに圧倒的な差をつけていたワニは、憤然と抗議しますが、ヒヒから分け前をもらうことになっている審判のハイエナは、抗議を一切受付けません。 

不満が高まる中で、次に行われたのが、力比べでした。ナツメヤシの固い実を割る競技です。ナツメヤシの実は、大、中、小の3種類が用意されました。ワニはその噛む力で、小サイズの実を割ることができました。体重の重いサイは足で踏みつけ、中サイズまで割ることができました。最も重量級の象が足で踏みつけますが、大のサイズを割るのには悪戦苦闘でした。何回も何回も繰り返して、ようやく割れました。誰しも象の勝ちと思っていたところ、ハゲ鷲がやってきて、鋭い口ばしで切れ目を付け、大きな実を足で掴み、遥か上空に舞い上がり、地上の固い岩をめがけて落下させました。いとも簡単に、実は割れました。結局、力比べの種目は、ハゲ鷲の優勝です。またしても、参加者のみならず、皆納得できません。 

主催者である象は怒り心頭ですが、ぐっと堪えて、次ぎなる競技を提唱します。自分が、絶対に負ける筈がない綱引きです。蔦のツルを使って互いに引き合うことにしました。皆、勝てるはずがないと尻込みしますが、サイが果敢に象に挑みました。ツルの両端にチンパンジーが輪を作り、一方をサイの角にかけ、一方を象の足にかけました。ハイエナの用意ドンの合図で、互いに渾身の力で引き合う筈でしたが、サイは象の回りをぐるぐると回り、ツルで縛り付けてから、全速力で直進しました。あわれ、象は大地に横転させられてしまいました。もちろん、象の負けです。サイはスキップしながら、勝利のウィニングランをします。 

象の堪忍袋の緒がきれました。「なんだこれは!ばかばかしい!もうやめだ!どいつもこいつも汚いやつばかりだ!」と言って帰ってしまいました。ライオンも、何らいい所を見せることが出来なかったので、捨てぜりふを残して帰ってしまいました。汗ひとつかかずに、ボロ儲けしたハイエナとヒヒがほくそえんで、「知恵のないやつが負けるんだ。」と言いながら、岩陰で儲けの山分けです。チータだけが、この光景を目撃していました。遠くから、それを見ながら、「汚いやつらだ。俺をはじめ、みんな知らずに頑張ったなんて、バカみたいだ。許せん。懲らしめてやりたいところだが…、ハイエナは俺より強いからな…」とブツブツこぼします。しかし、今日の競技会も、ハイエナ達の悪業も、すべて見通されていたのです。 

今まで雲一つない青空でしたが、一転にわかにかき曇り、暗雲が立ちこめ、あたりはすっかり暗くなりました。荘厳な低い声が突如サバンナに響きわたりました。天の声です。「皆の者よく聞け!このような競技会を2度と開いてはいけない!生き物には、それぞれに、私が与えた持ち味があるのだ。それを活かして生きればよいのだ。一つだけの能力を取り上げて、それだけがあるかないかで優劣を競い合うことは、意味のないことであり、かつ、私への冒涜である。まして、知恵があるからといって、何でも思いのままなどと考えることは、もってのほかである!」 

皆が唖然としているうちに、ひどい雷雨となりました。狙い定めたかのように、雷がヒヒとハイエナのすぐ近くに落ちました。それぞれ、ひどいやけどを負いました。それ以後、ヒヒの顔は、まるでやけどをしたかのように赤い顔になってしまい、ハイエナの体は、火で黒く焼けたようなブチ模様となってしまったのです。 

 次の日から、昨日何も無かったかのように、サバンナでは、いつもの生存競争が繰り広げられました。もちろん、2度と競技会は開かれませんでした。

進藤 直滋

私の会計士人生は、いつの間にか40年を越えています。
最初の10年に比べ、後半の30年は、大きな変革の中を通ってきた感じです。
これからの変化は、間違いなくもっと大きくなるでしょう。